改訂新版 世界大百科事典 「カルナウバ蠟」の意味・わかりやすい解説
カルナウバ蠟 (カルナウバろう)
carnauba wax
ロウヤシの新鮮な葉または葉柄に浸出する蠟をかきとってから熱湯で溶融し,型に注入して固化させたもの。主成分は高級脂肪酸(炭素数C=22,24,26,28)と高級アルコール(C=24,26,28,30,32,34)のエステルであって,とくにセロチン酸(C=26)とメリシルアルコール(C=30)から生じたセロチン酸メリシルC25H51COOC30H61が全体の75%を占める。エステル(80~81%)以外に遊離脂肪酸としてカルナウバ酸(リグノセリン酸,C=24)などが1~1.5%,遊離アルコールとしてセリルアルコール(C=26)などが9~10%含まれる。エステルのうち約半分が水酸基を含み,その1/3が不飽和であって,よいつやを与え,2/3が飽和であって硬さを与えるものであるが,両者とも同時にカルナウバ蠟が乳化されやすい原因ともなっている。
淡黄色ないし暗緑色の蠟状塊であって,融点は78~84℃,比重d15=0.990~1.001,酸価0.3~10,ケン化価78~89,ヨウ素価7~14,アセチル価54.8~55.2。45℃以上ではテレビン油やナフサによく溶けるが,室温では溶けにくい。その溶液は冷却するとゲル化する。天然蠟のなかでハードワックスhard waxの代表的なものであり,硬質で,よいつやを出す。硬化ろうそく,靴クリーム,強力つや出しワックス,レコード,自動車表面のコーティングなどに広く用いられるほか,他の蠟の融点上昇用添加剤としても用いられている。
執筆者:内田 安三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報