テレビン油(読み)テレビンユ(英語表記)turpentine oil

デジタル大辞泉 「テレビン油」の意味・読み・例文・類語

テレビン‐ゆ【テレビン油】

《〈ポルトガル〉terebintinaから。「テレピン油」とも》松脂まつやにから得られる揮発性の精油。無色ないし淡黄色で特異臭のある液体。主成分ピネンなど。溶剤・ワニスペイントなどの製造、油絵の材料などに使用。松脂まつやに油。テレメン油

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精選版 日本国語大辞典 「テレビン油」の意味・読み・例文・類語

テレビン‐ゆ【テレビン油】

  1. 〘 名詞 〙 [ 異表記 ] テレピン油アカマツ・クロマツなどから採取した松脂を水蒸気蒸留して得られた精油。無色ないし淡黄色の粘稠(ねんちゅう)な液体。特異な香気をもち、味は辛い。揮発しやすく、点火しやすい。日光にあたると酸化して樹脂様に変化する。合成樟脳・ボルネオール・テレピネオールなどの製造原料のほか、塗料、靴墨、油絵の材料、医薬品などに用いられる。松脂油。テレメン油。テレビン
    1. [初出の実例]「これにテレビン油を加へて稀くしたる者」(出典:写真鏡図説(1867‐68)〈柳河春三訳〉二)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「テレビン油」の意味・わかりやすい解説

テレビン油
てれびんゆ
turpentine oil

種々のマツ科植物から得られる精油。テレピン油ともいう。マツ科植物の生松脂(まつやに)はターペンタインといい、組成は85%の松脂rosinと15%のテレビン油である。これを水蒸気蒸留すると収油率約20%でテレビン油が得られ、蒸留残渣(ざんさ)はロジンガムロジンまたはコロホニイである。主産地は北アメリカであるが、近年は中国産が急増、そのほか、フランス、ギリシア、ロシア、スペイン、ポルトガル、インドにも産し、世界の年産額は松脂100万~150万トン、テレビン油20万トンに達したこともあり、精油のなかで最大の生産量を示している。組成はマツの種類によって異なるが、アメリカ産テレビン油はα‐ピネン50~60%、β‐ピネン25~35%である。テレビン油は香料としての直接の用途はないが、医薬品、塗料、選鉱用起泡剤などの製造原料、合成竜脳・樟脳(しょうのう)、テルピネオールなどの合成原料として重要である。また、油絵の画溶液としても使われる。近年、α‐ピネンをβ‐ピネンに異性化する技術が確立され、β‐ピネンを出発原料として、リナロールゲラニオールネロールシトラールシトロネラールメントールなどの合成に成功し、大規模な生産が行われている。ピネンはアセチレンイソプレンと対抗する重要な合成香料の製造原料であり、テレビン油から製造される各種合成香料は世界市場に定着するに至っている。

[佐藤菊正]

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改訂新版 世界大百科事典 「テレビン油」の意味・わかりやすい解説

テレビン油 (テレビンゆ)
turpentine oil

針葉樹,とくにマツ属の樹木からえられる揮発性の油。根,幹,やに,葉などに水蒸気をふきつけると,テレビン油は水蒸気とともに気体となり,冷やしたときには液体の上層部に集まる。無色~淡黄色で,粘りけが強く,さすようなにおいがある。水にはほとんど溶けず,アルコールには少しとける。中性またはやや酸性。多数の化合物よりなり,化合物の種類やその割合は樹種によって異なる。そのほとんどがモノテルペンだが,そのうちでもピネン類が中心となる。工業的に使われているものとして,幹に傷をつけてえるガムターペンティン,根からとりだすウッドターペンティン,パルプ製造時に集めるトールターペンティンがある。これらの化学成分は少しずつ異なっている。用途はおもに油性樹脂塗料の溶剤で,ほかに接着剤,殺菌剤,殺虫剤の原料となる。とりわけピネンがショウノウ合成の原料となったことは画期的なできごとであり,このためにショウノウを供給していたクスノキが日本で栽培されなくなった。日本は全量をアメリカ,中国から輸入している。葉の含むテレビン油類似物にモミ属よりえられるアビエス油abies oilがある。
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化学辞典 第2版 「テレビン油」の解説

テレビン油
テレビンユ
turpentine oil

松やに水蒸気蒸留すると得られる揮発性油.なお,この蒸留の際の残留物として固形のコロホニウム(ロジン)が得られる.日本工業規格では,0.860~0.875.1.465~1.478.150~170 ℃ で90% 以上留出.主成分はピネンで,ほかに若干のテルペン類を含む.塗料溶剤,ショウノウ,抱水テルピンなどの合成原料,靴墨製造原料などに用いられる.

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百科事典マイペディア 「テレビン油」の意味・わかりやすい解説

テレビン油【テレビンゆ】

松脂(まつやに)を水蒸気蒸留して得られる精油。無色〜淡黄色の粘性液で,α‐ピネン,β‐ピネンのほか,アルコール類,エステル類,フェノール類などを含む。沸点155〜165℃。空気中で酸化して樹脂状となる。溶剤,ペイント,ワニスの製造,合成樟脳(しょうのう)の原料などに利用。
→関連項目刺激療法精油封蝋

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テレビン油」の意味・わかりやすい解説

テレビン油
テレビンゆ
turpentine oil

赤松,黒松などの針葉樹の幹に切り傷をつけて採取する樹脂を蒸留し,精製して得られる精油。無色,粘性の強い液体で揮発性があり,水には溶けないが,空気に触れて固化する性質がある。油絵具を溶くのに使ったり,各種溶剤およびワニス,ペイントの製造などの原料になる。

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