種々のマツ科植物から得られる精油。テレピン油ともいう。マツ科植物の生松脂(まつやに)はターペンタインといい、組成は85%の松脂rosinと15%のテレビン油である。これを水蒸気蒸留すると収油率約20%でテレビン油が得られ、蒸留残渣(ざんさ)はロジン、ガムロジンまたはコロホニイである。主産地は北アメリカであるが、近年は中国産が急増、そのほか、フランス、ギリシア、ロシア、スペイン、ポルトガル、インドにも産し、世界の年産額は松脂100万~150万トン、テレビン油20万トンに達したこともあり、精油のなかで最大の生産量を示している。組成はマツの種類によって異なるが、アメリカ産テレビン油はα‐ピネン50~60%、β‐ピネン25~35%である。テレビン油は香料としての直接の用途はないが、医薬品、塗料、選鉱用起泡剤などの製造原料、合成竜脳・樟脳(しょうのう)、テルピネオールなどの合成原料として重要である。また、油絵の画溶液としても使われる。近年、α‐ピネンをβ‐ピネンに異性化する技術が確立され、β‐ピネンを出発原料として、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトラール、シトロネラール、メントールなどの合成に成功し、大規模な生産が行われている。ピネンはアセチレンやイソプレンと対抗する重要な合成香料の製造原料であり、テレビン油から製造される各種合成香料は世界市場に定着するに至っている。
[佐藤菊正]
針葉樹,とくにマツ属の樹木からえられる揮発性の油。根,幹,やに,葉などに水蒸気をふきつけると,テレビン油は水蒸気とともに気体となり,冷やしたときには液体の上層部に集まる。無色~淡黄色で,粘りけが強く,さすようなにおいがある。水にはほとんど溶けず,アルコールには少しとける。中性またはやや酸性。多数の化合物よりなり,化合物の種類やその割合は樹種によって異なる。そのほとんどがモノテルペンだが,そのうちでもピネン類が中心となる。工業的に使われているものとして,幹に傷をつけてえるガムターペンティン,根からとりだすウッドターペンティン,パルプ製造時に集めるトールターペンティンがある。これらの化学成分は少しずつ異なっている。用途はおもに油性樹脂塗料の溶剤で,ほかに接着剤,殺菌剤,殺虫剤の原料となる。とりわけピネンがショウノウ合成の原料となったことは画期的なできごとであり,このためにショウノウを供給していたクスノキが日本で栽培されなくなった。日本は全量をアメリカ,中国から輸入している。葉の含むテレビン油類似物にモミ属よりえられるアビエス油abies oilがある。
執筆者:善本 知孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
松やにを水蒸気蒸留すると得られる揮発性油.なお,この蒸留の際の残留物として固形のコロホニウム(ロジン)が得られる.日本工業規格では,0.860~0.875.1.465~1.478.150~170 ℃ で90% 以上留出.主成分はピネンで,ほかに若干のテルペン類を含む.塗料溶剤,ショウノウ,抱水テルピンなどの合成原料,靴墨製造原料などに用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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