日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナフサ」の意味・わかりやすい解説
ナフサ
なふさ
naphtha
原油の常圧蒸留で得られるガソリンの沸点範囲約25~200℃にあたる留分で、粗製ガソリンに該当する。第二次世界大戦前はこれを化学的に精製した直留ガソリンが、航空ガソリンの基材や自動車ガソリンとして使用されたが、戦後ガソリンエンジンの高性能化により、オクタン価の低い直留ガソリンはそのままでは使用できなくなり、ナフサの名称が使われるようになった。通常ナフサ留分はさらに軽質ナフサ(沸点約25~100℃)と重質ナフサ(沸点約80~200℃)に分けられ、これと区別するためナフサ全留分をフルレンジ‐ナフサとよぶことがある。日本では軽質ナフサの大部分は石油化学工業原料としてナフサ分解用に用いられ、一部は精製して軽質直留ガソリンとし、高オクタン価ガソリンへの配合材となる。重質ナフサの大部分は接触改質法の原料となり、高オクタン価改質ガソリンが製造され、またBTX(ベンゼン・トルエン・キシレン)原料のリホーメート(芳香族成分のとくに多い改質ガソリン)が製造される。このほかナフサは水蒸気変成法の原料として、水素、一酸化炭素の製造にも用いられる。日本では原油の蒸留だけではナフサが不足し、一部石油化学原料用ナフサが輸入されている。
[原 伸宜]