日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルボニウムイオン」の意味・わかりやすい解説
カルボニウムイオン
かるぼにうむいおん
carbonium ion
炭素上に正電荷をもつ3価の炭素中間体。カルボカチオンcarbocation、カルベニウムイオンcarbenium ionともいう。一般式⊕CR1R2R3(R1、R2、R3は一般に炭素で中心と結合する置換基)で示される。ハロゲン化第三アルキルの加水分解の中間体など、いろいろの反応の中間体として生成する。クリスタルバイオレットは一種の安定なカルボニウムイオンである。反応中間体としてのカルボニウムイオンは一般に不安定である。しかし、t-ブチルカルボニウムイオン(CH3)3C+は、Sb2F11-との塩の結晶として単離され、その中心炭素とメチル基の炭素間の距離は144ピコメートルで、通常の単結合と二重結合との中間の値を示し、また中心炭素に対し、3個のメチル基は120度の角度で平面的な構造をとる。
現在では溶液中で短い時間しか存在しないこれらの中間体のいくつかが、スペクトル的に確認されている。
[徳丸克己]