カルボニル鉄(読み)カルボニルてつ(その他表記)iron carbonyl

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルボニル鉄」の意味・わかりやすい解説

カルボニル鉄
カルボニルてつ
iron carbonyl

鉄に一酸化炭素が化合した化合物で,組成比により3種のものが知られている。 (1) ペンタカルボニル鉄,五カルボニル鉄  Fe(CO)5 。酸化第二鉄を還元して得られる還元鉄と一酸化炭素を加圧下で加熱反応させて生成する。常温で黄色液体。融点-20℃,沸点 103℃。水にほとんど不溶,有機溶媒に易溶。空気中で容易に発火触媒や磁石用純鉄の原料に用いられる。 (2) ノナカルボニル二鉄,九カルボニル二鉄  Fe2(CO)9 。ペンタカルボニル鉄を氷酢酸または無水酢酸に溶かし,水素を通じながら紫外線を照射して得られる。金属光沢のある橙黄色結晶エーテルベンゼンに不溶,エチルアルコールメチルアルコールにやや溶ける。 100~120℃で分解して五カルボニル鉄となる。五カルボニル鉄より反応性は大きい。乾燥空気中では安定。 (3) ドデカカルボニル三鉄,十二カルボニル三鉄  Fe3(CO)12 。二酸化炭素中でノナカルボニル二鉄をトルエンとともに加熱して得る。濃紫色,二色性をもつ結晶。分解点約 140℃。水に不溶,有機溶媒に溶けて濃紫色を呈する。空気中では不安定。

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改訂新版 世界大百科事典 「カルボニル鉄」の意味・わかりやすい解説

カルボニル鉄 (カルボニルてつ)

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世界大百科事典(旧版)内のカルボニル鉄の言及

【鉄粉】より

…アトマイズ法(アトマイズ粉末)で得られる粉末は,粒子が球形であり,圧縮性がよく,また還元粉に比べて純度が高いことから,焼結鍛造部品,焼結合金鋼の原料として好んで用いられる。以上の製造法のほかに,電解法,カルボニル法(鉄カルボニルFe(CO)5を熱分解する方法で,これによって得られる鉄をカルボニル鉄という),蒸発・凝縮法なども鉄粉の製造に用いられるが,これらの方法で得られる粉末は高純度または微細であり,主として磁性材料に用いられる。【林 宏爾】。…

※「カルボニル鉄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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