鉄粉は各種金属粉末の中で最も多量に用いられている。その製造には酸化鉄の還元法,溶湯のアトマイズ法が主として用いられ,大部分の鉄粉はこの2方法で作られる。還元法では,高品位の鉄鉱石または鋼材の熱間圧延時に生じる酸化被膜(ミルスケール)をコークスとともに加熱して還元し,得られる海綿状の鉄を粉砕して粉末とする。粉末粒子は多孔質で,圧粉体強度は高く,焼結性がよい。焼結機械部品のほか溶接棒,粉末切断,懐炉の発熱体,脱酸素剤などに用いられる。アトマイズ法(アトマイズ粉末)で得られる粉末は,粒子が球形であり,圧縮性がよく,また還元粉に比べて純度が高いことから,焼結鍛造部品,焼結合金鋼の原料として好んで用いられる。以上の製造法のほかに,電解法,カルボニル法(鉄カルボニルFe(CO)5を熱分解する方法で,これによって得られる鉄をカルボニル鉄という),蒸発・凝縮法なども鉄粉の製造に用いられるが,これらの方法で得られる粉末は高純度または微細であり,主として磁性材料に用いられる。
執筆者:林 宏爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…これらの性質は,粉末の成分ばかりでなく,粒子の大きさや形状などに依存して変化する。各種の金属粉末には,これらの性質を利用した独特の用途があるが,現在多量に使われている粉末は鉄粉,アルミニウム粉,銅粉などである。鉄粉は,酸化物の還元法,溶湯のアトマイズ法(アトマイズ粉末)などによって作られ,各種の焼結材料(小型歯車などの機械部品,小型モーターの鉄心,家庭用電気器具や自動車の含油軸受,高負荷用摩擦板)や溶接棒の原料,メタルテープの磁粉などとして用いられる。…
※「鉄粉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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