改訂新版 世界大百科事典 「カンギュルテンギュル」の意味・わかりやすい解説
カンギュル・テンギュル
bKa' `gyur bs Tan'gyur
チベット語に翻訳された経典と戒律の仏典群,およびそれらの注釈を含む論典群をそれぞれ指していうチベット名であり,甘殊爾・丹殊爾と音写される。いわゆるチベット《大蔵経》である。それらの大部分は779年から842年ころまでの間にインド,チベット両国の学僧の協力によって訳出され,814年には訳語が統一されて校訂が行われた。密教関係の翻訳の多くは11世紀以後に加えられた。14世紀はじめころ,中央チベット西部のナルタン寺で今日の形にまとめられ,一部にチベット人の著作も含まれる。
木版印刷の最も古いものは永楽版カンギュル(1410)で,ついで雲南北部からジャン版(1616)が現れた。テンギュルも中国の雍正版(1724)が最も古い。今日最も利用されるのは北京版(1717,24),ナルタン版(1732,42),デルゲ版(1733,40),チョネ版(1721,73)で,カンギュルのみのラサ版(1934)もある。
執筆者:山口 瑞鳳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報