日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンギュル」の意味・わかりやすい解説
カンギュル
かんぎゅる
bKa' 'gyur
甘殊爾(かんじゅる)と音写する。西蔵大蔵経(チベットだいぞうきょう)(チベット語訳の仏典の集成)の二大部の一、仏説部をいう。本来は「チベットに転成した仏説(仏陀(ぶっだ)のことば)」という意味であるが、「翻訳した仏説」の意に理解されている。顕教に属する律部と経部、真言(しんごん)(密教)に属するタントラ部(経部)からなる。経部の一部分と律部に小乗経典、経部の大部分に大乗経典、タントラ部に金剛乗(こんごうじょう)経典が収載され、総経典数は1000余点に及ぶ。大小乗経典の大部分は9世紀前半、他の多くは11世紀前後以降にチベット語訳された。ナルタン寺での集成が基礎となっているが、経典の配列は各版本によって異同がある。
[原田 覺]