日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンデル」の意味・わかりやすい解説
カンデル
かんでる
Eric R. Kandel
(1929― )
アメリカの神経科学者。オーストリアのウィーンに生まれる。1939年ナチスの迫害を避けアメリカに移る。1952年ハーバード大学卒業。1956年ニューヨーク大学医学部卒業。モンテフォーレ病院での臨床研修後、国立精神衛生研究所で研究。1960年ハーバード大学医学部マサチューセッツ精神衛生センター精神科医、1963年同大学講師。1965年ニューヨーク大学準教授。1974年コロンビア大学教授となる。1984年よりハワード・ヒューズ医学研究所研究員を兼任。
記憶の分子機構を解明するために、ウミウシのえらに対する防御反応を実験系として確立した。記憶には、弱い刺激に対して増強効果が数分から数時間持続する「短期記憶」と、より強い刺激に対して増強効果が数日から数週間持続する「長期記憶」が存在することを発見。また、短期記憶はタンパク質のリン酸化によって生じているのに対し、長期記憶は新規タンパク質が合成され、シナプスの形状が変化することにより生じていることを明らかにした。記憶の分子機構が、ウミウシのみならず哺乳類にも共通して存在することを証明し、記憶が神経細胞のシナプスの変化によって生じることを提唱した。これらの業績により、A・カールソン、P・グリーンガードとともに2000年のノーベル医学生理学賞を受賞した。
[馬場錬成]