カーンワイラー(その他表記)Daniel Henry Kahnweiler

改訂新版 世界大百科事典 「カーンワイラー」の意味・わかりやすい解説

カーンワイラー
Daniel Henry Kahnweiler
生没年:1884-1979

ドイツ生れのフランスの画商,批評家。マンハイムに生まれ,1902年よりパリに定住,07年パリに画廊を開く。翌年サロン・ドートンヌに落選したブラックの初期キュビスムによる一連の作品の個展を開催するが,これがキュビスムの最初の展示となる。ピカソとは1906年に知りあい,ブラック,ピカソともに,初期はカーンワイラーの画廊でのみ作品を展示している。彼は,キュビスムのほとんど全画家を扱い,またその運動の推進,とくに国外での展示活動による普及につとめた。ほかにもブラマンクらをも扱い,ボラール以降のパリの芸術界のもっとも強力な画商となった。また,《キュビスムへの道》(1920),《ファン・グリス》(1946)などの著作によって,キュビスムについての貴重な証言や,彼の好みの哲学的考察を残している。キュビスム時代のピカソとの交流の証言として,ピカソの描く《カーンワイラーの肖像》(1910)が残されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のカーンワイラーの言及

【画商】より

… 19世紀末以降,ボラールはセザンヌ,ゴッホ,マティス,マイヨールらの個展を続々と開き,豪華本の石版画集を刊行し,忘れられた過去の画家たちを発掘して,20世紀画商の典型となった。その後もピカソとキュビスムの作家を扱ったカーンワイラー,ベルリンに表現主義の拠点としての画廊と出版社〈嵐Sturm〉をつくり同名の雑誌を刊行したワルデンH.Walden,アメリカ現代美術の出発点となった写真家スティーグリッツの〈291〉画廊(ニューヨーク),第2次大戦中ニューヨークに〈今世紀画廊〉を設けて戦後の抽象表現主義を準備したペギー・グッゲンハイムPeggy Guggenheim(1898‐1979),解放前後のパリでボルス,フォートリエ,デュビュッフェの個展を開いたドルーアンRené Drouin(1905‐ )など,20世紀前半の芸術運動に果たした画商の役割は大きい。 第2次大戦後は美術家と購買層の大衆化に応じて,画商もニューヨークやパリでは300店を超えるようになり,マールバラMarlborough,マーグMaeght,ウィルデンスタインWildenstein,ドニーズ・ルネDenise Renéなど,数ヵ国,数都市に支店をもつ国際的画商も現れる。…

※「カーンワイラー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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