ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キネシス」の意味・わかりやすい解説
キネシス
kinesis
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翻訳|kinesis
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…〈現実態(エネルゲイア)〉とはそうした発展の究極の〈目的〉としての形相を実現した状態であり,〈可能態(デュナミス)〉とはそうした形相をいまだ実現せず,それを内に潜在的に秘めている状態である。一般に〈運動変化(キネシス)〉とはこうした可能態から現実態への移行であり,自然はそうした運動変化の原理をみずからのうちにもつものであり,一定の目的に向かってその形相を実現すべくすすむ。このアリストテレスの考え方は,デモクリトスの原子論の機械論的自然観に対する,生物学的な生気論的自然観であり,彼はリュケイオンLykeionの学校でこうした自然観に基づく研究を広く推し進め,テオフラストスらの弟子たちを生み出していった。…
…口を開くとき下くちばしを下げると同時に,これに連結した後方の方形骨が動き,それに連なった側方の頰骨(きようこつ)が前方へ押され,さらにこれに押されて上くちばしがちょうつがい関節を中心にして上転する。機械的に動くこのようなしくみを一般にキネシスkinesisといい,このために口を大きくあけることができる。 下くちばしの中央には舌がある。…
…両者の違いは,自然的存在者にあっては可能態から現実態へ向かうその運動の原理が〈自然(フュシス)〉としてその運動体(樫の木)そのものに内蔵されているのに対して,制作物にあってはそれが職人の〈技術(テクネ)〉として運動体(机)の外にあるという点だけである。しかも,この〈可能態‐現実態〉の関係は相対的・可動的であり,たとえば〈森の中の樹→仕事場の材木→机→読書〉といった系列のなかで,それぞれ前者が後者の可能態,後者が前者の現実態であり,可能態から現実態への移行は〈運動(キネシスkinēsis)〉と考えられるのである。したがってプラトンのイデア論にあっては無意味な変化しか認められなかったこの現実の世界が,アリストテレスのもとでは不断の合目的的な運動のうちにあると見られることになる。…
…泳ぎ回っているうちにたまたまその範囲に入ったゾウリムシは,その境目にくると,内側へ向けて方向転換するために,結局その範囲から外へ出られなくなって,そこに集まることになるのである。このようなしくみでおこる走性をキネシスkinesis(または無定位運動性)という。 もう一つは,刺激に対して直接ある方向をとって動く場合で,狭義の走性(または前者と区別するために指向走性(またはトポタキシスtopotaxis))という。…
…また上下顎が顎関節で連結し,とくに哺乳類では下あごが上あごに対して回転するのみならず,それぞれの動物の食性に対応して,滑動そのほかいろいろな運動ができる構造になっている。また硬骨魚類,ヘビ類,多くの鳥類のように,頭蓋の諸骨が互いに可動性関節でつながり,下あごの開閉につれて自動的に動くしくみ(キネシス)をもつものが少なくない。こうした運動をおこすには,顎筋または咀嚼筋と総称される上下顎を結ぶ種々の筋肉(哺乳類には4対ある)が協力している。…
※「キネシス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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