キリスト教原理主義(読み)きりすときょうげんりしゅぎ(その他表記)Christian Fundamentalism

知恵蔵 「キリスト教原理主義」の解説

キリスト教原理主義

聖書権威を絶対視し、処女懐胎キリスト再来を文字通りに信じ、進化論を認めない、などの点で、キリスト教右派にあって最右翼に属する集団の教義、主張。愛国主義、伝統的な家族の価値擁護、宗教教育の復権などをスローガンとし、人種、妊娠中絶移民、同性愛など、国論を二分してきた問題には、頑なに保守的な立場を貫く。1910年代に成立、20年代に台頭してきて(それを象徴するのが、25年、進化論を教えることを禁じたテネシー州法に反したかどで、高校の生物教師ジョン・スコープスが訴えられた、いわゆるスコープス裁判)、70年代以降、大きくその勢力を拡張した。とりわけ、テレヴァンジェリスト(テレビ伝道師)であるジェリー・フォルウェルが、79年に結成した宗教的政治組織モラル・マジョリティは、中絶の合法化、同性愛への寛容的態度、バッシング(アファーマティブ・アクションを参照)などに反対して、学校での祈とうの復活などを唱え、80年、84年の大統領選でレーガン勝利の、88年にはブッシュ(父)の南部での圧勝の、人的・資金的な原動力となった。歴代大統領の中でも際だって信仰心があつく、キリスト教右派を主要な支持基盤の1つとするブッシュ大統領の共和党政権下において、キリスト教原理主義は、国家外交軍事を左右しかねない影響力を持つに至っている。

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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