スコープス裁判(読み)スコープスさいばん(その他表記)Scopes Trial

改訂新版 世界大百科事典 「スコープス裁判」の意味・わかりやすい解説

スコープス裁判 (スコープスさいばん)
Scopes Trial

1925年にアメリカ南部テネシー州で行われた裁判。プロテスタント正統主義(ファンダメンタリズム)を熱心に信奉する南部はバイブル・ベルトとよばれていたが,同年3月テネシー州議会は,聖書の天地創造説に反する理論を公立学校で教えることを禁じた。そのためデートンという小さな町の高校の生物学教師スコープスJohn T.Scopesは進化論を教えて逮捕され,7月に裁判が行われた。これが一躍全米の注目を集めたのは,3回も大統領候補に指名され,国務長官を務めたこともあるW.J.ブライアンが検察側に,当代一流の弁護士ダローClarence S.Darrow(1857-1938)が弁護側に加わったためである。ブライアンはダローの追及に混乱したが,聖書を文字どおり信奉するプロテスタント正統派勢力は強大で,判決は有罪100ドルの罰金であった。正統派の影響はその後しだいに後退したものの,同州法が廃止されたのは1967年のことであった。80年前後から南部各州を中心に,進化論と聖書の天地創造説を並行して教えることに対する論争が再び高まった。
ファンダメンタリズム
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スコープス裁判」の意味・わかりやすい解説

スコープス裁判
スコープスさいばん
Scopes Trial

1925年アメリカ合衆国テネシー州デートンの高校教師ジョン・T.スコープスが,チャールズ・R.ダーウィン進化論を教えたかどで告発され,大きな話題となった裁判。その争点からモンキー裁判とも呼ばれる。1925年3月,テネシー州議会は,聖書の天地創造説を否定する理論を教えることを違法とした。聖書を字義どおりに解釈するファンダメンタリズムと自由主義的解釈の対立が予想されるこの裁判に,世界の注目が集まった。ウィリアム・J.ブライアンが検察側の代表を,クラレンス・ダローが弁護側の代表を務めた。裁判官は,テネシー州法の合憲性の検証や進化論の正当性に関する議論を控え,スコープスが進化論を教えたかどうかという論点のみに審理を限定した。スコープスが進化論を教えたことに疑いの余地はないとして,有罪判決が下され罰金 100ドルが科された。控訴審で,テネシー州最高裁判所は 1925年のテネシー州法の合憲性を支持したが,過大な罰金を科せられたとの理由でスコープスは無罪となった。この州法は 1967年に廃止された。

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百科事典マイペディア 「スコープス裁判」の意味・わかりやすい解説

スコープス裁判【スコープスさいばん】

〈スコープ裁判〉とも。1925年に米国南部のテネシー州で行われた裁判。プロテスタント・ファンダメンタリズム信奉者の多い南部では,反進化論法によって,聖書の天地創造説に反する理論を教えることが禁じられていた。テネシー州デートンの高校生物教師スコープスScopesが,これに反して進化論を教えたとして逮捕され,元国務長官W.J.ブライアン検事をかってでたこともあって,同裁判は全米の注目を集めた。スコープスは有罪,100ドルの罰金という判決を受けたが,一方では検事側の主張が時代錯誤であるとの声も聞かれ,米国の宗教感覚の変化を示す結果になった。1967年テネシー州の反進化論法は廃止されたが,1970年代後半ルイジアナ州とアーカンソー州で,進化論と天地創造説両方を公立学校で教えなければならないという州法が制定されたのをきっかけとして,再び議論が巻き起こった。

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世界大百科事典(旧版)内のスコープス裁判の言及

【ファンダメンタリズム】より

…そのルーツは19世紀に英米で何度か燃えひろがった千年王国運動や信仰復興(リバイバル)運動の中にあるが,1910‐15年に《The Fundamentals》という小冊子が広範に頒布されてから,一挙に社会問題へと発展した。1925年,テネシー州デートンの公立学校の教師スコープスJohn T.Scopesが進化論を教えたかどで告発され有罪とされた事件(スコープス裁判)は,その典型的な例であった。この事件にみられるように,ファンダメンタリズムは第1次大戦後の共産主義,労働問題,人種問題,暴力など政治経済的もしくは社会心理的要因と結びついているが,元来は近代化に伴う合理主義,世俗主義はキリスト教信仰の根本要素を危うくしているという宗教的批判である。…

※「スコープス裁判」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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