改訂新版 世界大百科事典 「クズイモ」の意味・わかりやすい解説
クズイモ
Pachyrhizus erosus(L.)Urban
ヤム・ビーンyam beanと呼ばれ,熱帯地方の有名な食用マメ科植物の一つである。一見クズに似た多年生のつる草で,大きな塊根があり,これを生のまま,または料理して食用とする。直径約40cm,重さ5~15kgくらいにまで大きくなり,切ると内部は白色で,デンプンや糖に富む。豆や豆果を食用とするマメ科植物の多くとは,大いに異なっている。茎は長さ2~6m。葉は互生し,3小葉をもつ複葉で,基部に狭長卵形の托葉がある。頂小葉は先端のとがったひし形から広卵状ひし形,ときには深く3片に裂けてクズの葉に似る。花序は長さ4~7cmで多数の蝶形花をつける。花は赤紫色から白色で長さ1.5~2cm。豆果は扁平で長さ7~14cm,幅1~2cm,有毛。中央アメリカに原産し,今日では食用として熱帯で広く栽培されており,東南アジアや中国南部では野生化している。日本では沖縄や小笠原で栽培される。塊根以外の部分にはロテノンやパキリジンなどが含まれており,有毒で,つきくだいた種子や全草が殺虫や漁労に用いられる。
執筆者:大橋 広好
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報