改訂新版 世界大百科事典 「ロテノン」の意味・わかりやすい解説
ロテノン
rotenone
東南アジアに自生しているマメ科植物のデリスや近縁の植物の根部に含まれる殺虫成分。原住民が根のしぼり汁を川中に投じて魚をとっていたといわれる。その後デリス根が殺虫剤として有効なことが明らかになり,その殺虫有効成分としてロテノンが単離された。
融点163℃を示す結晶である。ロテノンは接触剤および食毒として作用し,アブラムシ,グンバイムシ,アカハダニ,ウリバエなどの害虫に有効であるが,ピレトリンと異なり遅効性である。哺乳動物に対する急性毒性は50%致死量LD50=132mg/kg(ラット,経口)。ロテノンは細胞呼吸を阻害し,エネルギーの取得を妨げることによって殺虫作用を示すことが証明されている。デリス属およびその近縁の植物からはロテノンのほかに,スマトロール,デグエリンなど十数種の同族体(ロテノイド)が得られているが,ロテノンの殺虫活性が最も強い。実用にはデリス剤あるいはロテノン剤(商品名デリス,デトール,デリコン)として,ロテノン2~3%を含む乳剤,粉剤として使用される。
執筆者:高橋 信孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報