クズ(読み)くず

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クズ」の意味・わかりやすい解説

クズ
くず / 葛
[学] Pueraria lobata (Willd.) Ohwi

マメ科(APG分類:マメ科)の藤本(とうほん)。茎はつる状で、褐色の粗い毛があり、長さ10メートルにも達して基部は木化し、根は長大で多量のデンプンを蓄える。葉は3小葉からなり大きく、長柄がある。小葉は両面、とくに裏面に白毛をやや密につけ、頂小葉は菱(ひし)状円形、長さ・幅ともに10~20センチメートルで、3中裂するものもある。8~9月、葉腋(ようえき)の総状花序に長さ約2センチメートルの紅紫色の蝶形花(ちょうけいか)を密につける。旗弁(きべん)は基部付近から外側にほぼ直角に折れて立ち、内面中央付近に1対の黄色斑(はん)が目だつ。萼片(がくへん)は長く、萼筒のほぼ2倍。豆果は線形扁平(へんぺい)、褐色の長剛毛が密生する。北海道から奄美(あまみ)群島山野に生え、朝鮮半島、中国、東南アジア、太平洋諸島にも分布。根のデンプンは葛粉(くずこ)になり、茎の繊維で葛布(くずふ)を織る。昔、大和(やまと)(奈良県)の国栖(くず)の人がデンプンを売りに出したので、この植物をクズとよぶようになったという説がある。秋の七草の一つ。

[立石庸一 2019年10月18日]

薬用

漢方では、根を板状または小さな四角形に刻み、冷水中にさらしたあとに乾燥したものを葛根(かっこん)(形により板(いた)葛根、角(かく)葛根という)と称し、発汗解熱、鎮痙(ちんけい)剤として用いる。有名な処方葛根湯で、感冒インフルエンザはしか、肺炎、神経痛、蓄膿(ちくのう)症、中耳炎、肩こりなどに頻用する。花を葛花(かっか)といい二日酔いの治療に用いる。クズデンプン、葛根にもその作用がある。

[長沢元夫 2019年10月18日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クズ」の意味・わかりやすい解説

クズ(葛)
クズ
Pueraria lobata; kudzuvine

マメ科のつる性多年草。アジアの暖・温帯に分布する。山野に普通で,大群落をつくる。全草に粗毛を生じ,葉は3枚の小葉から成る複葉。花は紫紅色で7~9月頃に多数が総状花序をなして咲く。根は長く肥大し,上質のデンプンをたくわえている。くず粉は本来これを取出したものであるが,今日ではジャガイモデンプンで代用されている。葉はウシやウマの飼料とされ,茎の皮は布を織るのに利用された。日本では秋の七草の1つとして昔から親しまれてきたが,現在では北アメリカにも帰化植物として分布し,手ごわい雑草となっている。

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