改訂新版 世界大百科事典 「クテノミス」の意味・わかりやすい解説
クテノミス
ctenomys
tucu-tuco
tuco-tuco
外形がモグラに似た齧歯(げつし)目ヤマアラシ亜目クテノミス科(ツコツコ科)Ctenomyidaeの哺乳類の総称で,1属約32種がある。ツコツコともいう。ペルー,ブラジルからフエゴ島までの低地から標高5000mの高山までの草原や森林にすむ。体長15~25cm,尾長6~11cm,体重100~700g。アルゼンチン東部のラプラタツコツコCtenomys talarum(体長15~17cm,尾長6~7cm),アルゼンチン南部とフエゴ島のマゼランツコツコC.magellanicus(体長19~22cm,尾長7~8.2cm)などが知られる。体は地下生活に適応して一見モグラまたはホリネズミに似るがほお袋はない。四肢は短くがんじょうで頭が大きく,目は小さく上に向かい,耳介は痕跡的。前足のつめが大きく,指には前・後足とも剛毛を列生し土をかくのに適する。巨大な切歯(門歯)はつねに口唇外に露出しこれで土を掘る。尾は比較的短く毛をまばらに生ずる。コロニーを形成するが各個体はそれぞれ別の穴を掘ってすむ。その中で突然ツク,ツク,ツクと鳴き始め,10~20秒間も鳴き続ける。このためにツコツコの名がある。穴の中には草を敷いた居室と数個の食物貯蔵庫がある。穴の入り口を土で閉ざしたり開けたりして,中の温度をつねに20~22℃に保つ。食物は根,茎,草など。年1回1~6子を生む。妊娠期間103~107日。子は成長が早く10日で自活できる。寿命は3年以下。しばしばオクトドン科に含められる。
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報