改訂新版 世界大百科事典 「クリノイガ」の意味・わかりやすい解説
クリノイガ
sandbur
Cenchrus brownii Roem.et Schult.
和名は栗の毬(いが)の意味で,とげが生えてクリのいがの形をした小穂をもつイネ科の一年草で,熱帯アメリカの原産であるが,現在は世界中の熱帯にひろがり,日本には第2次大戦後に帰化した。茎は高さ30~90cmくらいで,立ち上がり,基部で多少枝分れしている。線形の葉は幅8mm,長さ20cmくらいである。花序は長さ5~10cmくらいの直立した穂状花序で,20~50個のクリのいが状の小穂を密につける。小穂のいがは総苞で,直径,高さとも4mmくらいの球形で,上部に5~8個のとがった裂片があり,全体に長毛といがよりも長い刺針があって,動物や衣類について運ばれやすくなっている。小穂は3個くらいで小さく,いがの中に包まれて入っている。海岸や荒れ地の日当りのよい所に生える雑草である。同属で熱帯アメリカ原産のいががやや大きく直径7mmくらいのシンクリノイガも第2次大戦後,琉球諸島に帰化した。クリノイガ属の一部の種は熱帯域で牧草として利用される。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報