イガ(その他表記)Tinea translucens

改訂新版 世界大百科事典 「イガ」の意味・わかりやすい解説

イガ (衣蛾)
Tinea translucens

鱗翅目ヒロズコガ科の昆虫。ごく小型のガで,開張1.2cm内外。幼虫羊毛毛皮などを食べ,家屋内や倉庫にすむため,人為的に各地へ運ばれてきた。ヨーロッパから中国に分布するT.pellionella(英名clothes moth)と同じとされていたが,最近の研究によって表記の学名のような別種とされている。日本のほか,ヨーロッパ,旧ソ連,インド,アフリカからアメリカ大陸にも分布している。幼虫は白色の筒巣の中に体を保護し,頭胸部を出して,絹布皮革毛織物などを食べる。冬に使用したラシャ地の洋服や羊毛のセーターなどを秋まで保管する場合,防虫剤を入れるなど注意しないと,穴を開けられてしまうことがある。現在では人家などに生息し,よく適応しているが,彼らの祖先は,おそらく鳥の巣で羽毛を食べたり,獣類の死体や毛,昆虫の死体などを幼虫の食料としていたのだろう。成虫は夜行性でよく家屋の中を飛ぶが,灯りに誘引されることはない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イガ」の意味・わかりやすい解説

イガ
いが / 衣蛾
clothes moth
[学] Tinea translucens

昆虫綱鱗翅(りんし)目ヒロズコガ科に属するガ。アジア、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカなど広範囲に分布している。幼虫は毛織物など衣類害虫で、家屋や倉庫内にすむため、その分布は人為的に拡大される。幼虫は小さな白い蓑(みの)をつくり、中から頭胸部を出して毛織物を食べ、老熟すると蓑を固着させて中で蛹化(ようか)する。幼虫態で越冬し、成虫は春から秋にかけ2、3回出現する。温度(25℃)と湿度(75%)の条件がよければ、1年に6世代を営むことができるという。はねの開張12ミリメートルぐらいの微小なガで、家屋内を飛び回っているのがごく普通にみられるが、一般のガと違って、灯火に誘引されることはない。人間生活が毛皮類などを一定の住み家に保存するようになる前は、野生の獣類や鳥類の巣などで毛や羽毛を食べていたものと考えられるが、現在では屋内生活にすっかり適応してしまった。毛織物の保存には、防虫剤を欠かすことができないが、成虫、幼虫とも光を好まないので、虫干し防除に有効である。

[井上 寛]


いが

ブナ科植物の果実を包む総包葉が変化した殻斗(かくと)の一部で、とくにクリ属の殻斗は鋭い刺枝をもっていて、これを普通、いがとよんでいる。殻斗は多くの鱗片葉(りんぺんよう)が、壺(つぼ)状に融合してできたものである。クリの雌花では総包葉をつくる。多数の鱗片葉が熟するにつれて、この総包葉も大きくなるが、この鱗片葉の間から枝を生じ、さらに枝分れして、鋭い刺(とげ)状となり、いがができる。

[吉田 治]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イガ」の意味・わかりやすい解説

イガ
Tinea pellionella; case-making clothes moth

鱗翅目ヒロズコガ科。前翅長 5mm内外。翅は細長く,周縁に長い縁毛がある。前翅は淡褐色で,中央部に3個の黒褐色斑がある。後翅は灰白色。下唇枝は牙状。屋内にすみ,幼虫は毛織物,毛皮,羽毛などを食害し,蓑虫 (→ミノガ ) のような管状の巣管をつくる。成虫は暖かい季節を通してみられる。全世界に分布する。

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百科事典マイペディア 「イガ」の意味・わかりやすい解説

イガ(衣蛾)【イガ】

鱗翅(りんし)目ヒロズコガ科の1種。温帯〜寒帯に広く分布する。開張12mm内外で灰茶色。幼虫は黄白色,10mm内外,毛織物,毛皮などを食害し,毛をつづって巣を作る。適温では年に数世代を繰り返す。防除にはパラゾールなどが有効。

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デジタル大辞泉プラス 「イガ」の解説

いが

三重県伊賀市にある道の駅。国道25号に沿う。

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栄養・生化学辞典 「イガ」の解説

いが

 クリなどのとげのある外皮.

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世界大百科事典(旧版)内のイガの言及

【クリ(栗)】より

…雌雄異花で虫媒花。雌花は殻斗につつまれ,発育して〈いが〉となる。6月ごろ開花し,果実は9~10月に成熟する。…

【ガ(蛾)】より

…そして次のような科が日本に分布している。ボクトウガ科(7種),ハマキガ科(556種),ホソハマキガ科(40種),ミノガ科(21種),ヒロズコガ科(33種),チビガ科(2種),ハモグリガ科(19種),ホソガ科(136種),コハモグリガ科(5種),アトヒゲコガ科(12種),ヒカリバコガ科(2種),スガ科(81種),メムシガ科(26種),ナガヒゲガ科(2種),ホソハマキモドキガ科(19種),ササベリガ科(2種),マイコガ科(2種),ホソマイコガ科(1種),ヒロハマキモドキガ科(2種),スカシバガ科(25種),ハマキモドキガ科(32種),ニセハマキガ科(1種),マルハキバガ科(57種),スヒロキバガ科(9種),ニセマイコガ科(10種),ヒロバキバガ科(1種),クサモグリガ科(4種),ツツミノガ科(26種),ネマルハキバガ科(2種),キヌバコガ科(2種),カザリバガ科(24種),ヒゲナガキバガ科(13種),キバガ科(75種),ニセキバガ科(1種),ニジュウシトリバガ科(3種),シンクイガ科(10種),マダラガ科(28種),セミヤドリガ科(2種),イラガ科(26種),セセリモドキガ科(3種),マドガ科(24種),メイガ科(600種),トリバガ科(56種),カギバガ科(30種),オオカギバガ科(2種),トガリバガ科(38種),シャクガ科(790種),ツバメガ科(4種),フタオガ科(18種),アゲハモドキガ科(1種),イカリモンガ科(2種),カレハガ科(20種),オビガ科(1種),カイコガ科(5種),イボタガ科(1種),ヤママユガ科(12種),スズメガ科(70種),シャチホコガ科(120種),ドクガ科(52種),ヒトリガ科(107種),ヒトリモドキガ科(5種),コブガ科(39種),カノコガ科(3種),ヤガ科(1200種),トラガ科(6種)。以上のように,日本産のガは4500種にも達しているが,チョウの種数はその1/20くらいしかない。…

※「イガ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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