とげ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

とげ
とげ / 刺・棘

植物や動物の体表面から突出した硬くて先のとがったものの総称。一般に植物では、動物ではの字をあてることが多い。なお、先の曲がったものはかぎ(鉤)とよばれる。[福田泰二]

植物のとげ

植物の場合、とげ(刺)の形態学的性質はさまざまである。イラクサの刺は表皮の一部分に由来し、毒液を分泌する一種の腺毛(せんもう)である。バラ、タラノキなどの刺は、表皮だけでなく、皮層も加わった突起物であり、一種の毛状体である。また、器官の変態した刺としては、茎針、葉針、根針がある。茎針は苗条の一種で、葉が発達しないで茎が針状となったものである。葉針は葉の変態による刺で、葉の全体が1本の刺になったもののほか、複葉の小葉が刺になったもの、葉軸が刺になったもの、托葉(たくよう)が刺になったもの(托葉針)などがある。茎針は葉腋(ようえき)、葉針は葉序を示す配置、托葉針は葉の付着点の両側、というように一定の位置にあるのに対して、毛状体は不規則に散在するのが普通である。しかし、サンショウやサンショウバラでは、葉の付着点に一対の毛状体があるため、托葉針と誤解されやすい。こうしたことから、刺がなにによるかを究めるためには、単に位置だけでなく、構造や発生をも調べる必要がある。熱帯アメリカ原産のヤシ科植物には、幹の下部から出た多数の不定根が刺になるものがあり、根針の例とされる。植物における刺の役目は、大形動物から身を守る、つる性の植物体を立体的な姿勢に保つ、表面積を縮小して過剰な蒸散を防ぐ、果実に付随して動物による散布を助けるなど、さまざまであるが、なかには機能が不明であるものも多い。[福田泰二]

動物のとげ

動物のとげ(棘)は普通、体表の毛が変化したもので、主として防御用に使われる。棘毛(きょくもう)ともいう。哺乳(ほにゅう)類のヤマアラシやハリネズミなどの太い軸をもった棘はよく知られている。ある種のヤマアラシの棘は先が鉤(かぎ)状になり、敵動物の体に刺さるとそこに残る。しかも刺さった場所の筋肉の動きに乗じてさらに体内に深く入り込み大きな打撃を与える。硬骨魚類のゴンズイは背びれと胸びれとに1本ずつ棘をもち、毒腺(せん)から毒を分泌するため、これに刺されると激痛を感ずる。軟骨魚類のアカエイも尾に1本(まれに2または3本)の有毒の棘をもつ。棘皮動物のウニ類の外殻表面には先のとがった棒状の棘が密生しており、関節と連絡して緩慢な動きをするが、毒を有するものもある。昆虫の鱗翅(りんし)類のドクガやイラガなどの幼虫は刺毛(しもう)という棘状突起を有し、内腔(ないこう)には刺激性の毒液がある。刺毛はヒトなどに刺さると容易に折れ、毒液が浸出する。[内堀雅行]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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