知恵蔵 「クロマグロ完全養殖」の解説 クロマグロ完全養殖 近畿大学水産研究所大島実験所(和歌山県串本町)のいけすで、2002年6月23日、人工孵化(ふか)により育ったクロマグロの親魚が産卵、受精卵が5000粒採種された。受精卵は同月25日に孵化し、仔魚の形態からクロマグロであることが確認され、クロマグロの完全養殖が実現した。対象となる魚の生活史の1サイクルすべてを人間の飼育下で行うことを、完全養殖という。同大のクロマグロ養殖研究は1970年から始まったが、天然の親魚が産卵しなかったり、産卵・孵化しても稚魚の段階で全滅するなど、困難の連続であった。クロマグロの完全養殖の達成は世界に例がなく、他種も含めた大型マグロ類でも初めて。種苗が安定的に生産できれば天然マグロの資源保護にも役立つ。同研究所が生産する完全養殖クロマグロは、大学発ベンチャー企業によって市場に出荷され、一般に流通・販売されている。 (榎彰徳 近畿大学農学部准教授 / 2007年) 出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報 Sponserd by