日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロムチタン黄」の意味・わかりやすい解説
クロムチタン黄
くろむちたんき
chrome-titan-yellow
セラミック顔料の一つ。酸化チタン(Ⅳ)(ルチル型)TiO2を母格子とし、これにアンチモンとクロムが固溶したもので、タイルの素地用顔料である。最近一般の無機顔料の分野でも、その高い耐熱性、耐薬品性から、厳しい条件下で使用される塗料、プラスチックなどの着色剤としての利用が検討されている。酸化チタン(Ⅳ)、酸化アンチモン(Ⅲ)Sb2O3、酸化クロム(Ⅲ)Cr2O3などを配合し約1300℃の焼成で得られる。焼成中酸化によりアンチモンはSb5+となり、CrSbO4のルチル型化合物が生成し、これが改めて酸化チタン(Ⅳ)と固溶するものと考えられる。ほかに酸化クロム(Ⅲ)とタングステン酸アンモニウム(NH4)2WO4などを配合する例もあるが、この場合は、焼成中生成するCr2WO6が三重ルチル型構造で、これと酸化チタン(Ⅳ)とが固溶するものと考えられる。半磁器質の素地に5%顔料を配合、1230℃で焼成したものの分光反射率曲線の形状、吸収、反射の位置は、粉末の試料とほとんど変わらず、素地中、顔料が分解しないで残っていることがわかる。アンチモンの量を増すと、赤みが強くなる。酸化チタン(Ⅳ)は酸化スズ(Ⅳ)に比べ、釉(ゆう)と反応しやすいため、釉の着色用としては酸化チタン系顔料は適さない。
[大塚 淳]