改訂新版 世界大百科事典 「クロムランク」の意味・わかりやすい解説
クロムランク
Fernand Crommelynck
生没年:1885-1970
ベルギーの劇作家。ブリュッセルに生まれ,俳優,新聞記者を経て,1906年に処女作《森には行くまい》で認められた。やがてリュニェ・ポーがパリの制作座で上演した《堂々たるコキュ》(1920)が大当りとなり,22年にはモスクワでメイエルホリドが演出するなど,世界的名声を得た。伝統的なだまされ亭主の筋書を極端に推しすすめ,妻の素行を疑った夫がその証拠を握るために町中の男と寝ることを強制する。この主人公の狂気と自虐はこっけいであると同時に残酷で,奔流のようなせりふと共に今日なお新鮮さを失わない。以後も34年まで《幼い恋人たち》(1921),《黄金のはらわた》(1925),《カリーヌ》(1929),《あまりに心の小さい女》(1934)など,フラマン的喧騒と悲劇的詩情の融合をめざした数編の戯曲を書いたが,出世作に比肩する作品は,ついに生み出せずに終わった。
執筆者:安堂 信也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報