亭主(読み)テイシュ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

亭主
ていしゅ

仏教の『首楞厳経(しゅりょうごんきょう)』によることばで、客をもてなす一家の主人をいう。鎌倉時代から一般に使われ、茶席で茶を点じて客を接待する人もいう。封建時代には「亭主関白(かんぱく)の位、嚊左衛門尉(かかあさえもんのじょう)」など、夫は絶対の権力者の関白であり、妻はほんの左衛門尉ほどの位であると、しゃれていった。「亭主関白」ということばは現在も聞かれ、このような権力者の好みには家族も同調するというので「亭主の好きな赤烏帽子(えぼし)」などの俗諺(ぞくげん)も生まれた。反面「亭主は達者で留守がよい」など女房側の願望を反映したものもある。[佐藤農人]

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精選版 日本国語大辞典の解説

てい‐し【亭主】

〘名〙 「ていしゅ(亭主)」の変化した語。
洒落本・寸南破良意(1775)きおい「おのしゃアていしか」

てい‐しゅ【亭主】

〘名〙
① 一家の主人。あるじ。
※明月記‐治承四年(1180)五月二三日「広博適慰心緒、亭主坐東方
※徒然草(1331頃)二一六「その座には亭主夫婦、隆弁僧正、あるじ方の人にて座せられけり」 〔捜神記‐巻一八〕
② 特に、宿屋、茶屋、揚屋などの店主。あるじ。
※玉塵抄(1563)二四「やどの亭主(テイしゅ)が枕をだいて盧にあたえてちっと御やすみあれ」
③ 夫(おっと)。主人。良人。
※談義本・根無草(1763‐69)前「人の妻女の、櫛笄(くしかうがい)に役者の紋を付て頭にいただくを、涎たらして見て居る亭主(テイシュ)の鼻毛」
④ 茶席で、茶をたてて客を接待する人。また、広く、一座の主人役をつとめる人。
無名抄(1211頃)「判者のもとにまうでてまめやかに涙をながしつつなきうらみければ亭主いはんかたなく」

てい‐しゅう【亭主】

※虎明本狂言・萩大名(室町末‐近世初)「又ていしうなどか、こなたさまをおともいたひてまひったらは、うれしがって」

てい‐す【亭主】

〘名〙 「ていしゅ(亭主)」の変化した語。〔明応本節用集(1496)〕
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)八「ていすめでござります。御ひいきによふこそ。有がたふござります」

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世界大百科事典内の亭主の言及

【茶事】より


[演出と作法]
 茶事をして一座の建立を願う思想は,その場に濃密な芸術的雰囲気の醸成を期待するものであり,人間の心の交流を前提として,名器名品,酒食を媒体として一期一会の短い時の間を充足させようとする演出である。したがってその成否は,当日の客組にあるから亭主(主催者)は人選に腐心し,あらかじめ親密な,あるいはその可能性を期待しうる既知の人々を案内し,事前に参加者全員に構成員に対する了解をとらねばならない。当日,連客は主催者の家の寄付(よりつき)(待合せのための部屋。…

【茶道】より

…茶道を芸能と考えるとき,芸能たる(1)思想と演出,(2)衣装と道具,(3)所作の型,(4)舞台,を茶道も備えていなければならないが,それぞれ(1)わび茶の思想と趣向,(2)茶道具と室礼,(3)点前(てまえ)と作法,(4)茶室と茶庭,としてすべて備えている。これらの要素を総合する茶道は世俗的な日常世界を脱却して,客と亭主の新たなる紐帯を求める寄合の芸能といえよう。
[歴史]
 中国唐代の社会に定着した茶の文化は遣唐使たちによって奈良時代から平安時代の初期に日本に伝えられた。…

※「亭主」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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