日本大百科全書(ニッポニカ) 「クーヤキウス」の意味・わかりやすい解説
クーヤキウス
くーやきうす
Jacobus Cujacius (Jacques Cujas)
(1522―1590)
フランスの法学者。トゥールーズ、モンペリエ、バランス、ブルージュの諸大学でローマ法を講じた。イタリアの注釈学派がユスティニアヌス帝の『ローマ法大全』を絶対的権威としてこれをもっぱら注釈し、実際生活に適用していた(イタリア風mos italicus)のに対し、彼はルネサンス期の人文主義の立場から古典期ローマ法の復活を主張した(ガリア風mos gallicus)。
彼の手法は、『ローマ法大全』ばかりでなく、他の法史料やキケロをはじめ非法史料と比較検討しながら、古典期ローマ法を純化しようとするものであった。その結果、当時の封建法や慣習法の諸原理を理論上無視し、法実務を軽視することとなったため、のちに批判された。しかし、『ローマ法大全』の改竄(かいざん)部分(インテルポラーティオー)を指摘し、初めてローマ法の科学的研究を行った功績は大きい。彼の著作はほぼ聴講者のノートから復原されたものであり、17世紀に全集『Opera omnia』として出版された。
[佐藤篤士]