1人の作家または著述家がその生涯に書き遺(のこ)したすべての著述を収録したものをいう。したがって、その編集は後継者または故人と関係の深い者があたり、できる限りの手段を尽くして、手紙、日記、ノート、書目、その他の些細(ささい)な記録までも集める。その編集に、著作権法(1970)では、著者の死後に全集または選集を編集するときには、その著書が出版後3年を経過したものを、その出版権にかかわらず、その全集または選集に収載することができる(80条2項)としている。全集は個人のあらゆる著述を収めるので、主要作品を選んで集録する選集とは区別される。全集はその人の学術または文芸を根本から研究するための唯一のよりどころであるから、その価値はきわめて高い。
中国で824年に編集された白居易(はくきょい)の詩文全集『白氏文集』75巻は、平安時代にわが国にもたらされ、「集」といえば通じたくらい利用されたが、中国では唐の末期から詩文集が始まり、日本では平安末に個人の歌集がつくられた。江戸時代には林羅山(はやしらざん)以来林家(りんけ)では文集を歴代編し、漢学者の文集も盛んに行われた。個人の全集では、夏目漱石(そうせき)の死後、門弟小宮豊隆(とよたか)が中心となって、1918年(大正7)以来8回、初めは全13巻、のちには全34巻まで新出原稿や書簡などで増補して完全な全集を目ざしていた。世界的にもっとも完全な全集を目ざしているのはゲーテの全集で、重要なものはワイマールWeimar版143巻(1887~1919)、コッタCotta版40巻(1902~12)、アルテミスArtemis版24巻(1949~54)、またアカデミーAkademie版(1952~ )は刊行中である。
[彌吉光長]
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
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