日本大百科全書(ニッポニカ) 「グラウビュンデン」の意味・わかりやすい解説
グラウビュンデン
ぐらうびゅんでん
Graubünden
スイス最南東部にある州。面積7105平方キロメートルは同国最大。人口18万5700(2001)。州都クール。公用語はドイツ語、レト・ロマン語、イタリア語の三つで、常用語とする住民はそれぞれ60%、30%、10%である。東部アルプスと西部アルプスが複雑に入り組んだ山岳州で、ここに降った雨雪はライン、ドナウ、アッダ、アディジェ、ティチーノの各河川により排水される。グラウビュンデンはスイスの縮図といってよく、「150の谷をもつ州」の異名をもつほど、地形的隔絶性のため谷ごとの独立性が保たれてきた。州内の最低部は275メートル、最高部はベルニーナ・アルプスの高峰ピッツ・ベルニーナ山の4049メートルである。スイス最高所の常住集落ユーフ(2126メートル)は後ライン川の支谷アーフェルスにある。
この地方は古くからアルプス越えの要地にあたり、ユリア峠(2284メートル)、ゼプティマー峠(2310メートル)、マローヤ峠(1815メートル)、ベルニーナ峠(2323メートル)、オーフェン峠(2149メートル)、オーバーアルプ峠(2044メートル)などの有名な峠がある。しかし、19世紀から20世紀にかけての山岳鉄道の開通が峠道の通過交通の衰退を招き、それが農業の集約化を促した。そのため、観光業の発達とともに酪農が中心的な産業となっている。州内に、ウィンタースポーツで世界的に有名なサン・モリッツ、ダボス、アローザなどの町がある。
[前島郁雄]