縮図(読み)シュクズ

デジタル大辞泉 「縮図」の意味・読み・例文・類語

しゅく‐ず〔‐ヅ〕【縮図】

原形の寸法を一定比で縮小して描いた図。
現実の様相を、規模を小さくして端的に表したもの。「社会の縮図
[補説]書名別項。→縮図
[類語]擬人たとえ比喩形容象徴比況たとえば直喩明喩隠喩暗喩諷喩・寓喩・提喩換喩・声喩・メタファーアレゴリー概要概略大要あらまし大筋概括粗筋大意大略大概大綱概況大枠あらかた輪郭アウトラインレジュメ抄録摘要提要梗概

しゅくず【縮図】[書名]

徳田秋声の小説。昭和16年(1941)発表。当局の圧迫により中絶し未完。芸者置屋の銀子の半生を描く自然主義文学の傑作。

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精選版 日本国語大辞典 「縮図」の意味・読み・例文・類語

しゅく‐ず‥ヅ【縮図】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. ( ━する ) 原形を一定の割合で縮めて図を描くこと。また、その図、地図など。
      1. [初出の実例]「水近して遠く、山小にして大なり。那の方円八百余里の縮図と作る」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)三)
    2. ( 比喩的に用いて ) ある物事の全体の感じを、その規模を小さくして表わしたもの。
      1. [初出の実例]「斯様な町外れの光景は何となく人をして社会といふものの縮図(シュクヅ)でも見るやうな思をなさしむる」(出典武蔵野(1898)〈国木田独歩〉九)
  2. [ 2 ] 小説。徳田秋声作。昭和一六年(一九四一)「都新聞」に連載。未完。花柳界に生きる女主人公銀子の半生とその周囲の人間像を描くもの。作者の代表作の一つで私小説的色合いが濃い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「縮図」の意味・わかりやすい解説

縮図
しゅくず

徳田秋声(とくだしゅうせい)の長編小説。1941年(昭和16)6月28日~9月15日『都(みやこ)新聞』に連載。80回で中絶。46年(昭和21)小山書店刊。主人公三村均平は妻の死後、子供とも別居し、愛人銀子が住む東京・白山(はくさん)の芸者屋で生活するようになる。そのへんから話題が銀子の過去にさかのぼってゆく。江東(こうとう)の靴屋に育ち、千葉から芸者に出て、石巻(いしのまき)、東京芳町(よしちょう)へと住み替える話が主軸となる。内容が芸者の身の上話なので、太平洋戦争直前の時局にふさわしくないという当局からの干渉に妥協せず、中絶した。秋声が1931年夏に知った白山芸者富弥(小林政子)の半生を、自然主義作家として、50年の創作経験を積んだ最後の到達点として描いた晩年の傑作。

[和田謹吾]

『『秋声全集17』(1974・臨川書店)』『紅野敏郎編著『論考徳田秋声』(1982・桜楓社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「縮図」の意味・わかりやすい解説

縮図
しゅくず

徳田秋声の長編小説。 1941年発表。戦時下の『都新聞』に連載中,政府の文芸統制による干渉を受け,80回をもって作者みずから筆を絶ち,作者の死により未完のまま残された。進歩的知識人であった三村均平は次第に知識階級への反発を強め,中年を過ぎたいまは亡妻の子とも別れて,芸者置屋を始めた銀子と同棲している。銀子は江東の靴屋の娘で,早くから芸者に出て転々とところを変え今日にいたった女である。未完のため銀子の前半生の叙述に終始しているが,犠牲者としての庶民の心を心として生きようとした作者の本領が発揮され,高い芸術性をそなえている。

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百科事典マイペディア 「縮図」の意味・わかりやすい解説

縮図(美術)【しゅくず】

画家修業のためや鑑定の参考に資するために,和漢の古名画を縮写した図のこと。また心覚えのために自画を写しておくこともある。狩野探幽狩野常信谷文晁などの縮図は特に名高い。

縮図(文学)【しゅくず】

徳田秋声の長編小説。1941年から《都新聞》に連載,情報局の圧力を受けて中断,作者の死により未完に終わった。芸者に身を売った下層社会の女の半生を描く一種の風俗小説で,自然主義人生観の成熟を示す秋声の代表作。

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デジタル大辞泉プラス 「縮図」の解説

縮図

1953年公開の日本映画。監督・脚本:新藤兼人、原作:徳田秋声、撮影:伊藤武夫。出演:乙羽信子、島田文子、北林谷栄、宇野重吉、殿山泰司、菅井一郎、沢村貞子ほか。第4回ブルーリボン賞主演女優賞(乙羽信子)受賞。

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世界大百科事典(旧版)内の縮図の言及

【徳田秋声】より

…大正期に入ってからは《爛(ただれ)》(1913),《あらくれ》(1915)などの力作を相ついで発表,いずれも《足迹》と同じく庶民的な女性の半生を浮彫りにした作品で,自然主義時代の活動を結実させた観がある。その後,心境小説を書く一方で,家計を支えるために通俗小説を乱作した時期があり,26年,糟糠の妻はまの急死をきっかけに,作家志望の山田順子との老年の恋を体験するなど,作家生活の沈滞と危機に見舞われたが,小石川白山の芸妓小林政子(《縮図》のモデル)を知った30年代前半ごろから,晩年の円熟期に入った。〈順子もの〉といわれる作品群を集大成した《仮装人物》(1935‐38)であり,情報局の弾圧により中絶を余儀なくされたが,戦時下の切迫した状況に庶民的反骨をつきつけた《縮図》(1941)である。…

※「縮図」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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