縮図(読み)しゅくず

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

縮図
しゅくず

徳田秋声長編小説。 1941年発表。戦時下の『都新聞』に連載中,政府の文芸統制による干渉を受け,80回をもって作者みずから筆を絶ち,作者の死により未完のまま残された。進歩的知識人であった三村均平は次第に知識階級への反発を強め,中年を過ぎたいまは亡妻の子とも別れて,芸者置屋を始めた銀子と同棲している。銀子は江東の靴屋の娘で,早くから芸者に出て転々とところを変え今日にいたった女である。未完のため銀子の前半生の叙述に終始しているが,犠牲者としての庶民の心を心として生きようとした作者の本領が発揮され,高い芸術性をそなえている。

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デジタル大辞泉の解説

しゅく‐ず〔‐ヅ〕【縮図】

原形の寸法を一定比で縮小して描いた図。
現実の様相を、規模を小さくして端的に表したもの。「社会の縮図
[補説]書名別項。→縮図

しゅくず【縮図】[書名]

徳田秋声の小説。昭和16年(1941)発表。当局圧迫により中絶し未完。芸者置屋の銀子の半生を描く自然主義文学の傑作。

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大辞林 第三版の解説

しゅくず【縮図】

実物を小さくちぢめて写した図面。
幅広い物事をその本筋を中心に簡略にしたもの。 「人生の-」

しゅくず【縮図】

小説。徳田秋声作。1941年(昭和16)より発表。思想統制にあい未完。芸者銀子の生活を中心に、庶民生活の各層を客観的に描く。自然主義文学の代表作の一。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

縮図
しゅくず

徳田秋声(とくだしゅうせい)の長編小説。1941年(昭和16)6月28日~9月15日『都(みやこ)新聞』に連載。80回で中絶。46年(昭和21)小山書店刊。主人公三村均平は妻の死後、子供とも別居し、愛人銀子が住む東京・白山(はくさん)の芸者屋で生活するようになる。そのへんから話題が銀子の過去にさかのぼってゆく。江東(こうとう)の靴屋に育ち、千葉から芸者に出て、石巻(いしのまき)、東京芳町(よしちょう)へと住み替える話が主軸となる。内容が芸者の身の上話なので、太平洋戦争直前の時局にふさわしくないという当局からの干渉に妥協せず、中絶した。秋声が1931年夏に知った白山芸者富弥(小林政子)の半生を、自然主義作家として、50年の創作経験を積んだ最後の到達点として描いた晩年の傑作。[和田謹吾]
『『秋声全集17』(1974・臨川書店) ▽紅野敏郎編著『論考徳田秋声』(1982・桜楓社)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

しゅく‐ず ‥ヅ【縮図】

[1] 〘名〙
① (━する) 原形を一定の割合で縮めて図を描くこと。また、その図、地図など。
江戸繁昌記(1832‐36)三「水近して遠く、山小にして大なり。那の方円八百余里の縮図と作る」
② (比喩的に用いて) ある物事の全体の感じを、その規模を小さくして表わしたもの。
※武蔵野(1898)〈国木田独歩〉九「斯様な町外れの光景は何となく人をして社会といふものの縮図(シュクヅ)でも見るやうな思をなさしむる」
[2] 小説。徳田秋声作。昭和一六年(一九四一)「都新聞」に連載。未完。花柳界に生きる女主人公銀子の半生とその周囲の人間像を描くもの。作者の代表作の一つで私小説的色合いが濃い。

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