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酪農 らくのうdairy

翻訳|dairy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

酪農
らくのう
dairy

乳牛を飼養し牛乳を生産する農業経営,または牛を加工してバターチーズを製造する農場,牛乳や乳製品を販売,配達する施設をもいう。酪農はヨーロッパで 13~14世紀にオランダを中心に始り,18~19世紀の農業革命によって近代酪農として発展し,続いてアメリカオーストラリアに普及した。現在,オランダ,デンマーク,スイスは乳製品,チーズの生産で有名であり,またアメリカは世界一の酪農生産国である。日本では,千数百年前乳牛を飼い,酪や酥 (そ) と呼ぶ乳製品をつくったと伝えられるが,産業としての酪農は 1887年頃から始った。

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デジタル大辞泉の解説

らく‐のう【酪農】

牛・などを飼育して、飲用乳や乳製品の原料となる乳を生産したり、乳を精製・加工して製品としたりする農業。

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百科事典マイペディアの解説

酪農【らくのう】

乳牛を飼育して牛乳および乳製品の生産を行う農業経営。近代的酪農は,早くから有畜輪栽式農法を行い,畜産物を日常の食品としていたヨーロッパで農業革命後に発展した。
→関連項目混合農業サイレージサイロ畜産

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世界大百科事典 第2版の解説

らくのう【酪農 dairy】

〈酪〉という字は,〈牛,羊,馬などの乳から作った飲料,またバターの類〉を指すという。同義の語に〈酥〉があり,〈醍醐〉がある。醍醐となると乳製品のなかでも“精”なるものとされる。英語のdairyの訳語としてこのなかから〈酪〉がとられ,酪農という言葉が作られたのだが,dairyはふつう,(1)乳牛の搾乳をする場所,(2)牛乳を加工し,バター,チーズなどの乳製品を製造する場所,(3)乳製品製造業,(4)乳牛を飼い,牛乳生産や牛乳加工をしている農場,(5)前記にいる乳牛,という意味をもっている。

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大辞林 第三版の解説

らくのう【酪農】

〔「酪」は牛などの乳から作った飲料〕
牛・羊などを飼い、乳やその加工品を作る農業。 「 -家」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

酪農
らくのう

酪農とは、英語のデイリーdairyの訳語で、乳用畜(主として乳牛)を飼育して乳や乳製品を生産する農業をいう。広義には生産・加工から販売・配達までを含めて用いることもある。酪という字は乳を乳酸発酵させた飲料を意味し、酥(そ)や醍醐(だいご)とともに一種の乳製品である。1882年(明治15)に出版された『農業捷径(しょうけい)』には「酪農とは搾乳・乳汁の取扱い、乳脂・乳酪・乾酪の製造等を司(つかさど)るものなり」と定義されている。[正田陽一]

世界の酪農

家畜の乳の利用は紀元前3000年ごろには始まっている。メソポタミアのシュメール人はこのころ牛乳を搾り、神に捧(ささ)げ、王侯・貴族は飲用に供していた。エジプトでも前2100年ごろ、王に牛乳を勧めている図が遺跡のレリーフに残されている。ヨーロッパへは前2000年代の青銅器時代にもたらされたと考えられる。古代ゲルマン人にとって牛乳が重要な食品であったことは、北欧の神話で最初の人間が雌牛の乳で育てられたとされていることにも示されている。しかし産業としての酪農業が確立されたのはずっと後年で、13~14世紀のヨーロッパにおいて中世の都市の興隆に伴ってオランダを中心として酪農が開始された。15世紀ごろにはバルト海沿岸諸国へ盛んに乳製品を輸出していたことが記録に残されている。18世紀後半の産業革命に続いて、飼料カブを作目の一つに加えた輪作式有畜農法が普及し、ヨーロッパの近代酪農は飛躍的な発展を遂げることとなった。20世紀に入ってからは北アメリカ、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランドなどでの牛乳生産が急速に伸び、また旧ソ連においても生産の増大が顕著になっていた。
 主要酪農国の特徴を比較すると、オランダは乳牛の代表品種ホルスタインの原産国として名高く、またエダムチーズやゴーダチーズなどの著名なチーズを製産している。デンマークは農業協同組合組織が発達し、牛乳・乳製品の生産・輸出で知られている。また酪農副産物を利用しての養豚業も発達している。フランスはEU諸国有数の酪農国で、ウシ、ヒツジの飼養頭数も多く、羊乳を原料としたロックフォールチーズをはじめ200種以上のチーズを生んでいる。スイスはアルプスへの放牧による高原酪農で知られており、エメンタールチーズやグリュイエールチーズなども名高い。アメリカは五大湖の南のコーンベルトが酪農の中心地で、乳専用タイプで大形のホルスタインを飼育している。オーストラリアの酪農家は大部分が牛舎をもたず、ミルキングパーラーで搾乳している。[正田陽一]

日本の酪農

わが国で牛乳が初めて飲用に供されたのは7世紀ごろである。高句麗から入った医書により日本に伝えられた牛乳の医薬としての効能は、呉(ご)の国の渡来人智聡(ちそう)に受け入れられ、その子福常が孝徳(こうとく)天皇に牛乳を献じて和薬使主(やまとのくすしのおみ)の姓を賜り、乳長上(ちちのおさのかみ)の職が与えられた。このころから加工品である酪・酥・醍醐の利用が始まっている。江戸時代にも8代将軍徳川吉宗(よしむね)のときに現在の千葉県にある牧場で白牛酪(はくぎゅうらく)をつくらせているが、このころまでは乳製品も医薬としての利用が中心で、食品としての利用はなかった。日本に初めて輸入された欧米の改良品種のウシは、1873年(明治6)にアメリカ人で教師をしていたダンEdwin Dunが導入した40頭のショートホーンであった。その後、明治政府はエアーシャーを奨励品種として指定したが、これは体質強健で粗飼に耐える長所をもち、乳頭が粗大でなく、小柄の日本人の手で搾乳するのに適すると思われたからである。しかしその後に民間の手で輸入されたホルスタインに乳量の点で劣ったため、やがてホルスタインに置き換えられていった。
 牛乳販売店の第1号がつくられたのは1863年(文久3)のことで、前田留吉(とめきち)が横浜に開いたものであった。明治時代の中ごろから大都市には飲用牛乳の需要がぼつぼつと出てきて、この需要に応ずる専業搾乳業者が大都市近郊に生まれてきた。これは泌乳中の乳牛だけを集めて搾乳し、泌乳期を過ぎると売却して、新たに泌乳中のウシを購入するいわゆる一腹(ひとばら)搾りという形態で、消費地への輸送の便という特色はあったが、都市の近代化や道路網の発達により姿を消しつつある。この形態は大規模な乳肉複合経営に多少残っている。
 1925年(大正14)、北海道に産業組合法による北海道製酪販売組合連合会が創設されて、酪農民自身によるバターの製造事業が開始され、これがのちに雪印(ゆきじるし)乳業株式会社の母体となった。一方、昭和の初期に北日本を襲った冷害による凶作は有畜農業を推進するきっかけとなり、稲作を中心とする耕種農業のかたわら少数の乳牛を飼う水田酪農が徐々に各地に普及浸透していった。44年(昭和19)には乳牛の飼養頭数は従来の最高の26万頭に達した。第二次世界大戦の末期から、日本の酪農は急速に凋落(ちょうらく)したが、戦後は食生活の欧風化に伴うパン食の普及と並行して牛乳の消費が伸び、ふたたび酪農は隆盛を取り戻した。乳牛の飼養頭数も50年(昭和25)に19万8000頭であったものが、86年には210万3000頭と10倍以上に達し、その後は伸び悩んで99年(平成11)には182万頭と減少している。牛乳の生産量も865万5000トン(1999)を生産するようになった。1960年までは酪農家の戸数も増加していたが、それ以降は経営の専業化と規模拡大が進んで戸数は減少の傾向にある。73年のオイル・ショック以後、牛乳消費の増加率は鈍化する一方、生産はますます増強されたため、バター・脱脂粉乳などの滞貨がみられるようになり、79年から生産調整が酪農団体の手によって行われている。
 多頭化による経営の合理化が進められた結果、1986年には、全国平均で1飼養家当り搾乳牛13.9頭とフランス並みの頭数規模となり、北海道の平均は21.2頭とデンマークにほぼ匹敵することとなった。98年では1飼養家当りの搾乳牛は全国平均で27.6頭と、規模が拡大する傾向にある。飼育管理の方法も機械化が進んで、ミルカーによる機械搾乳や畜舎清掃のためのバーンクリーナーも普及して省力化が進んでいる。繁殖も人工授精で行われることが多い。乳牛が生産する子ウシは、雌は更新のための後継牛として育成されるが、雄は肉用に売却される。最近では、雄の子ウシや老廃牛の肥育を酪農と複合で行う乳肉複合経営の酪農家が大部分を占める。
 北海道は日本随一の酪農地帯で、乳牛飼養の基盤となる牧野面積も広く、乳牛1頭当りの草地面積が約46アールで、オランダのレベルに近い。岩手、宮城、福島、群馬、千葉、神奈川、長野、兵庫などの諸県も酪農が盛んであるが、都府県の草地面積は乳牛1頭当り約4アールと極端に少なく、そのため購入飼料費を多額に要し経営を苦しくしている。[正田陽一]
『広瀬可恒・鈴木省三編著『新編酪農ハンドブック』(1990・養賢堂)』

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