日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
グラシアン・イ・モラーレス
ぐらしあんいもらーれす
Baltasar Gracián y Morales
(1601―1658)
スペインの作家、イエズス会士。ベルモンテ生まれ。ケベードとともに、機知と彫琢(ちょうたく)を旨とする奇想主義(コンセプティズモ)を代表する。スペイン各地のイエズス会学院で道徳と哲学を講じるかたわら、『英雄』(1637)、『慎重派』(1646)などのモラリスト的な作品、『神託必携』(1647)などのアフォリズム集などを発表。修道者でありながら、人間不信と悲観主義に満ちた彼の思想は、聖と俗の不思議な混淆(こんこう)を示すバロック時代を反映している。自然人と教養人の二人の主人公を配して人間世界を寓意(ぐうい)的にとらえた『批評好き』(1651~1657)は、ショーペンハウアーなど外国の作家たちからも愛好された。
[佐々木孝 2017年11月17日]
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