ケベード(読み)けべーど(英語表記)Francisco Gómez de Quevedo y Villegas

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケベード」の意味・わかりやすい解説

ケベード
けべーど
Francisco Gómez de Quevedo y Villegas
(1580―1645)

スペインの政治家、詩人、小説家。名門の子としてマドリードに生まれ、アルカラとバリャドリードの大学で語学、哲学、神学を学ぶ。生まれつき足が悪く、しかも強度の近視であったが、早くから文武両道にわたる際だった才能が注目された。30代の初めイタリアへ渡り、シチリアやナポリの総督を務めたオスナ公爵の顧問となり、外交問題で活躍するが、オスナ公爵の失脚に巻き込まれて投獄され、所領地に謹慎を命じられた。1621年フェリペ4世が王位につき、政治の実権がオリバレス公伯爵に移ると、宮廷への復帰が認められる。しかし1639年ふたたび逮捕されてレオンのサン・マルコス修道院に監禁される(1639~43)。この失脚は、国王の食卓で発見された風刺詩が原因とされているが、実際はフランス側スパイの嫌疑をかけられたためらしい。釈放後は健康を損ない、1645年9月8日、転地先のビリャヌエーバ・デ・ロス・インファンテスで没した。

 ケベードは知性と情熱を備えた複雑な個性の持ち主で、その特色は作品にも反映している。一方ではローペ・デ・ベーガと比肩される叙情詩をものし、他方では当代随一と評される痛烈な風刺詩を数知れず残している。散文作品においても、高度な学識見識もとに『神の政治』(第1部1626、第2部1634~35執筆)や『マルクス・ブルータス伝』(1644)を書くかと思うと、ことば遊びと奇想を駆使したピカレスク小説大悪党』(1626)や、風刺と諧謔(かいぎゃく)に満ちた『夢』(1627)のような、全編に才気横溢(おういつ)する作品を発表しており、まさにスペイン語天才奇想主義の王者とよばれる貫禄(かんろく)を示している。

[桑名一博]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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