改訂新版 世界大百科事典 「グラレアヌス」の意味・わかりやすい解説
グラレアヌス
Glareanus
生没年:1488-1563
スイスの音楽理論家,人文主義者。本名ロリティHeinrich Loriti。ケルン大学で哲学,神学,数学のほか音楽を学び,1512年には皇帝マクシミリアン1世から桂冠詩人の称号を授与される。その後バーゼル,フライブルクなどで詩学,神学,古典文学を教授しながら,古代・中世の文芸と音楽理論を研究。エラスムスと親交を結び,宗教的には反宗教改革の立場を固持した。主著《ドデカコルドンDodekachordon》(1547)は古代・中世の理論的伝統に立脚,ボエティウスやガフリウスを踏まえて,特に教会旋法の理論に大きく貢献した。従来八つとされていた旋法に,実際の音楽では既に使われていたイオニアとエオリアの各正格と変格の4種が加えられた。これは正格の場合長音階と自然的短音階に相当する。計12の旋法は定量音楽,それも多声音楽に適用され,譜例としてジョスカン・デ・プレを含む大量のネーデルラント楽派の作品の引用がある。その理論はルネサンスからバロック前期に至る理論家と作曲家に多大の影響を及ぼした。
執筆者:土田 英三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報