改訂新版 世界大百科事典 「グルジェフ」の意味・わかりやすい解説
グルジェフ
Georgei Ivanovitch Gurdjieff
生没年:1877ころ-1949
アルメニア生れの神秘主義者。唯物論的なオカルト教義を創始し,20世紀初頭の神秘思想と1960年代のヒッピー文化に多大な影響を与え,現在なお後継者たちの活動は注目を浴びつづけている。若くしてインド,チベット,アラブ諸地域を放浪し,ロシアの特務機関員を務めたりしながら,20年間にわたって秘教を研究した。1912年からロシアで自身の秘教組織を構築し,20年代にはヨーロッパに渡って名を知られる存在となった。彼の教義は,人間を束縛する古い思考と感情を投げ捨てて高次の霊的自由を達成しようとするもので,それを実現するために〈ワークwork〉と呼ばれるシステムを提示した。重力と陋習(ろうしゆう)から肉体と精神を解放していく行法が含まれ,全体として今日の精神医学にいう集団療法,芸術療法を加えた西洋的禅が目ざされた。20世紀の神秘主義運動家としてシュタイナーと双へきをなす人物で,ウスペンスキーP.D.Ouspensky(1878-1947)やベネットJ.G.Bennet(1897- )等の弟子,ならびに建築家F.L.ライトや小説家D.H.ロレンス等の信奉者を得た。主著に宇宙論的寓話《ベルゼブブが孫に与える物語》(1950),自伝《注目すべき人々との出合い》(1964)がある。
執筆者:荒俣 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報