改訂新版 世界大百科事典 「コレオケーテ」の意味・わかりやすい解説
コレオケーテ
Coleochaete
体は直立分枝する糸状体,または細胞が平面に放射状に密に並んでできた偽柔組織の盤状体で,いずれも池や沼などに生育する。生殖は卵と精子による。生卵器は枝の側部に形成され,その先端は長く伸びて受精毛となり,精子をとらえるのに役だつ。受精すると,卵の付近の細胞から細胞糸が伸長し,受精卵を完全にとり囲む。この部分はとくにスペルモカルプspermocarpと呼ばれる。受精卵は成熟すると減数分裂して通常4~8個の遊走子となる。遊走子は精子と同じように先端に2本の鞭毛をもって泳ぐが,接合することなく,基物につくと発芽して親と同じ体に生育する。すなわちこの藻類は単相植物で,世代の交代はない。コレオケーテは細胞分裂の際の微小管の行動や精子の鞭毛基部の構造などが似ることから,陸上植物のコケ,シダおよび種子植物などの祖先型に近い緑藻であろうと考えられている。いたるところの池や沼に生育し,とくに水草の体に着生するものが多い。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報