日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
コーポレート・ベンチャー・キャピタル
こーぽれーとべんちゃーきゃぴたる
Cooperate venture capital
ファンドを組成して未上場のベンチャー企業に投資し、おもに株式上場によるキャピタル・ゲインで収益を得ている一般的なベンチャー・キャピタルに対して、ファイナンス以外の事業を行っている企業が、ベンチャー企業のもつ技術・ノウハウや顧客を獲得し、自社の事業に生かすことを目的として、ベンチャー企業に投資をすること。CVCと略される。
コーポレート・ベンチャー・キャピタルの形態としては、自社内に担当部署を設け、自社が拠出する資金を直接投資するものと、社外のベンチャー・キャピタル等に資金を預け、自社専用のファンドを組成してもらってベンチャー企業に投資するものがある。
コーポレート・ベンチャー・キャピタルの目的は、ベンチャー企業のもつ技術を自社事業で活用することや、新規事業としてベンチャー企業の事業を取り込み、自社の成長につなげることである。そのため、対象となるベンチャー企業の株式を取得することにより、資本提携して技術交流を行ったり、買収して自社の事業部とすることもある。最近は、メガバンクがフィンテック関連のベンチャー企業に投資し、その技術やサービスを自社の新商品や新サービスに取り込んでいる事例が顕著である。同時に、ベンチャー企業にとっても、資金調達のほか、仕入れ・販売連携やシステム活用を含む技術・生産提携等、大企業との協業は事業を成功に導くために有益であり、うまくいけば双方にとってメリットがある。
コーポレート・ベンチャー・キャピタルが投資先企業を探す方法として、分野ごとにベンチャー企業の経営者が15分程度のプレゼンテーションを行う「ピッチ・イベント」がある。また、投資先ベンチャー企業を育成するために、アクセラレーション・プログラムを運営している企業もある。
『ベンチャー白書2021』(ベンチャーエンタープライズセンター刊)によれば、日本国内における事業会社および、コーポレート・ベンチャー・キャピタルを含む「非金融事業法人」による投資額は、2020年度(令和2)には1903億円に上っており、国内ベンチャー・キャピタル(1476億円)や海外投資家(491億円)を抜いてもっとも多い。世界全体ではコーポレート・ベンチャー・キャピタルによる投資額は7310憶ドル(2020)に上っており、前年比23.7%増となっている。
[鹿住倫世 2022年12月12日]
『一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター『ベンチャー白書2021』(2022)』