大学事典 「ゴリアルド」の解説
ゴリアルド[羅]
フランス語ではゴリアール。中世の大学で学業を放棄し,バッカス(飲酒)とウェヌス(好色)をたたえながら放浪した学生の総称。彼らの生活はしばしば酒と女と歌に要約されるが,彼らがラテン語で書き残した数多くの詩の多くは,冒瀆的であると同時に叙情的でもあり,制度的な宗教性から自由な情動の発露がみられるという点で,のちに文学とよばれる表現の先触れと呼ぶにふさわしいものである。中世末期にあらわれた詩人フランソワ・ヴィヨンがその『遺言』の冒頭で「われは学生なり」という詩句を響かせるのも偶然ではない。また,その認識や情動が聖と俗をかさねあわすように働くという意味で,ダンテやエックハルトというルネサンス的な文人や哲学者たちもゴリアルドの系譜に連なるともいえるだろう。中世の大学はスコラ哲学者のみならず,無数のゴリアルドたちを産み出したのであり,そのことは近代の大学から「知識人」が誕生したのと同様の意味をもっている。
著者: 白石嘉治
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報