改訂新版 世界大百科事典 「サオ族」の意味・わかりやすい解説
サオ族 (サオぞく)
Sao
アフリカ中央部,チャド湖の南端から,シャリ川をはさんで東に40km,西に60km,南東へ200kmの広い地域に,10世紀ころから16世紀ころまで住んだ部族。彼らは各地に多くの集落をつくり,ていねいに死体を埋葬した。伝承によると,サオ族は〈おそろしい力の巨人〉であったという。これはナイル川上流の長身のクシュ族(クシュ王国)の末裔であることを意味する,との説がある。サオ族はその後継者であるコトコ族Kotokoとともに金属器文化を有し,失蠟法で青銅製品を鋳造し,鉄製品もつくったが,それらの多くは装身具であった。またきわめて特異な造形のテラコッタ製の人頭像,祖先像,仮面をつけた人像をつくった。人像は一般に頭部と上半身だけが表される。目と口の飛び出た顔容は,怪奇さのなかに一種のユーモラスな趣がある。また粘土製の玩具も出土しており,それには人形や騎馬人などがある。
執筆者:木村 重信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報