改訂新版 世界大百科事典 「サクライソウ」の意味・わかりやすい解説
サクライソウ
Petrosavia sakuraii(Makino) J.J.Smith(=Protolirion sakuraii (Makino) Dandy)
暗い樹林の下にまれにはえるユリ科の多年草で,葉緑体を欠く腐生植物。地中に短い根茎があり,多数の根を出す。根の皮層の中には共生菌の菌糸が入っている。菌が地中の腐葉などを分解し,栄養を供給する。7月ころに高さ10~20cmになる数本の直立する花茎を出す。花茎には鱗片状の葉が互生する。葉は長さ2~5mm,淡黄色で光合成をしない。茎頂に総状花序をつける。花被片は淡黄色で,3枚ずつが2輪につく。内片は長さ約1.5mm,外片はやや短い。おしべは6本あり葯は卵形である。子房は3個の心皮から成り下部だけ合生して上部は離れている。蒴果(さくか)をつくり,中に多数の小さい種子をつける。心皮がほとんど離生しているのは,ユリ科のなかでは原始的な性質で,これを重視してユリ科から独立させ,サクライソウ科をつくる考え方もある。1903年に岐阜県恵那山麓の神社の境内から,桜井半三郎によって初めて採集されたため,サクライソウと呼ばれるようになった。岐阜県,京都府,福井県,石川県,奄美大島,台湾に見られ,スマトラ島北部からも報告がある。よく似たP.stellaris Becc.はマレーシア地域の西部,中部に広く分布する。
執筆者:山下 貴司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報