翻訳|hypha
真菌植物の本体(栄養体)を構成する分枝した細い糸状体を菌糸といい,その集まりを菌糸体myceliumという。菌糸は先端生長によって伸長し,栄養分となる有機物があり,適当な湿度や温度などの良好な外的条件が続くかぎりいつまでも生長する。隔壁がなく多核体をなすもの(接合菌類)と,隔壁があって細胞構造をなすもの(子囊菌類,担子菌類)がある。後者の場合,菌糸は常に1細胞列で,隔壁の中央に穴があって両隣の細胞は連絡し,その穴を通して物質の移動が行われる。担糸菌類では,各細胞に1個の核をもつ菌糸(一次菌糸)が異性の菌糸と接合するが,双方の菌糸に由来する2個の核はすぐには融合せず,それぞれが独立に分裂するため,2核をもつ菌糸(二次菌糸)が発達し,この二次菌糸が子実体(いわゆるキノコ)を形成する。菌糸の細胞壁の主成分は一般にキチンまたはヘミセルロース,あるいはその両者である。
執筆者:北川 尚史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
多くの菌類の栄養体を構成する糸状のものをいう。担子菌類と子嚢(しのう)菌類は多細胞菌糸で、円筒形の細胞が縦一列に長く連なり、細胞内の核数によって、多核多細胞菌糸、二核菌糸(二核多細胞菌糸)、一核菌糸(一核多細胞菌糸)の別がある。接合菌類や卵菌(らんきん)類の菌糸は、仕切りのない多核管状菌糸である。放線菌類は、これらのような核膜のある核はもたないが管状菌糸である。菌糸は胞子または菌糸の断片から生じ、普通は枝分れして成長する。その1本1本は菌糸であるが、全体は菌糸体といわれる。これは有機物を栄養源、エネルギー源として生活し、それに伴って自然界では還元者として重要な働きをしている。環境さえよければ、菌糸体は限りなく成長を続けられる。条件によっては、分岐と菌糸結合を盛んに繰り返し、菌糸細胞は変形して種々の菌糸組織をつくってキノコなど子実体や菌核、菌糸束を形成する。これらは担子菌類と子嚢菌類においてみられる。
[寺川博典]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…これらの諸点で細菌やウイルスなどの原核生物とは基本的に異なっている。栄養体は菌糸hyphaといわれる糸状の細胞からなり,この菌糸がゆるく集まったものを菌糸体myceliumという。これが単細胞のものもあり,酵母などでは出芽増殖をくり返す。…
…いわば生物として独自な進化をとげ,植物とも動物とも区別される一大生物群といわれている。単細胞のものは酵母で代表され,醸造その他の発酵工業に利用され,糸状のものはいわゆるカビと称され無数の胞子をつくり,この糸状細胞は菌糸hyphaと呼ばれる。菌糸が複雑に分化して大型化した構造は胞子形成に関連した器官で子実体fruit body,fructicationと呼ぶ。…
…これらの諸点で細菌やウイルスなどの原核生物とは基本的に異なっている。栄養体は菌糸hyphaといわれる糸状の細胞からなり,この菌糸がゆるく集まったものを菌糸体myceliumという。これが単細胞のものもあり,酵母などでは出芽増殖をくり返す。…
※「菌糸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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