改訂新版 世界大百科事典 「サシオコウモリ」の意味・わかりやすい解説
サシオコウモリ (挿尾蝙蝠)
sheath-tailed bat
sac-winged bat
翼手目サシオコウモリ科Emballonuridaeの哺乳類の総称。尾端が腿間膜の上面に突出しているのでこの名がある。虫食性コウモリで,メキシコから南アメリカまでの新世界およびアジア南部,アフリカ,マダガスカル,オーストラリアおよびパラオ諸島の熱帯と亜熱帯に分布し,分布域が広い。その種数は約50種に達するが,日本には見られない。前腕長3~8cm,頭胴長3.5~10cm,尾は0.6~3cm。体色は単色のものと斑点または縞模様のあるものがある。尾は頭胴長の約1/3または1/4で,その先端部が腿間膜の中央上面に突出する。したがって,腿間膜の後半部はかかとの骨だけで支えられる。また腕の前にある膜にセイヨウナシ型のポケットをもつ種もある。休息場所は変化に富み,岩の割れ目,洞窟,樹洞あるいは丸めた樹葉の中などである。開けた森林や水辺を好み,10~40頭の小群で生息する。超音波を発しながら昆虫類を捕食し,飛び方は速い。メキシコからブラジルまでいるハナナガサシオコウモリRhinchonyctes nasoは川のほとりにある木の葉の下に30頭ほどの群れで休む。アマゾンでサルが本種を食べていたという観察例がある。
執筆者:吉行 瑞子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報