日本大百科全書(ニッポニカ) 「サトクリフ」の意味・わかりやすい解説
サトクリフ
さとくりふ
Rosemary Sutcliff
(1920―1992)
イギリスの女流作家。重度の障害をもつため幼時は家庭で教育されたが、のち美術学校に進み、細密画を専攻、王立細密画協会の一員となった。第二次世界大戦後文筆活動に転じ、実際に作家として認められたのは1950年代初頭からである。初期には平易な歴史物語を書いていたが、やがて、歴史と人生における光と闇(やみ)との交代を、正確な細部、生動する人物像に支えられた劇的な物語によって表現するようになり、子供のための歴史小説の質を飛躍的に向上させ、20世紀後半のもっとも重要なイギリス児童文学作家の一人と目されるようになった。代表作に『ともしびをかかげて』(1959)を頂点とするローマン・ブリテン三部作、『太陽の戦士』(1958)などがあるが、成人読者向きの歴史小説も書いている。
[猪熊葉子]
『猪熊葉子訳『太陽の戦士』(1968・岩波書店)』▽『猪熊葉子訳『ともしびをかかげて』(1969・岩波書店)』▽『猪熊葉子他訳『「ともしびをかかげて」が書かれるまで』(『オンリー・コネクトⅡ』所収・1979・岩波書店)』