太陽(読み)タイヨウ(英語表記)sun

翻訳|sun

デジタル大辞泉 「太陽」の意味・読み・例文・類語

たい‐よう〔‐ヤウ〕【太陽】

太陽系の中心にある恒星地球からの距離は約1.5億キロ。直接見える部分を光球といい、外側には彩層コロナがある。光球の半径は地球の109倍、質量は33万倍、平均密度は1.4。表面温度はセ氏約6000度。恒星としては大きさも明るさもふつうの星で、エネルギーは中心における水素核融合反応によってまかなわれている。地球上の万物を育てる光と熱のみなもととなっている。
物事の中心となるもの、人に希望を与えるもの、輝かしいものなどのたとえ。「心の太陽
[補説]雑誌「太陽」、人工衛星「たいよう」は別項。
[類語]天日てんじつ日輪にちりん火輪かりん金烏きんう日天子にってんし白日はくじつ赤日せきじつ烈日れつじつお日様天道てんと今日こんにちサンソレイユ(太陽の光)陽光日光日色にっしょく日差し日影天日てんぴ

たいよう[人工衛星]

昭和50年(1975)2月に打ち上げられた科学衛星SRATSスラッツの愛称。東京大学宇宙航空研究所(後の宇宙科学研究所、現JAXAジャクサ)が開発。太陽活動の静穏期における超高層大気(主に熱圏)のプラズマ観測を数年にわたって続けた。また太陽のX線、紫外線放射の観測も行った。昭和55年(1980)6月に運用終了。

たいよう【太陽】[書名]

総合雑誌。明治28年(1895)創刊、昭和3年(1928)廃刊。博文館発行。高山樗牛たかやまちょぎゅう大町桂月上田敏らの論説・文芸時評・人物評論・小説などを掲載。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「太陽」の意味・わかりやすい解説

太陽 (たいよう)
sun

基本情報
赤道半径=69万6000km 
視半径=15′59″.64 
質量=1.9891×1030kg 
赤道重力=273.45m/s2 
体積=130万4000(地球=1) 
比重=1.41 
自転周期=25.38日 
赤道傾斜角=7.°25 
極大光度=-26.8等

太陽系の中心に位置し,地球にもっとも近い恒星。平均的な恒星の一つであり,スペクトル型G2型の主系列星に分類される。太陽系の総質量の99.9%を占め,惑星その他の多くの太陽系天体を従えている。その放射する光や熱や風は惑星その他に種々な影響を与え,惑星の大気を作り,それを動かし,地球上にはついに生命を芽生えさせるに至ったのである。地球上に住むわれわれ人類にとっては,太陽は単なる一つの恒星ではなく,われわれの生活を全面的に支配するかけがえのない偉大な天体である。

太陽は東から出て西に没する。次の日も同様である。しかしこの1日の間に太陽の位置はその背景,すなわち星空に対してほぼ1°東にずれている。これを重ねて1年経つと,太陽は星空を一巡することになる。実際には東へ,東へとずれるだけではなく,季節によってあるいは北寄りに,あるいは南寄りにもずれる。このように星空を背景にした太陽の描く軌跡が黄道である。黄道は天球に投影された赤道と23.°5の傾きで交わり,両者の交点が春分点と秋分点である。この傾きのために温帯では太陽の高度が夏は高く冬は低く,季節の変化が生ずる。同時に日の出,日の入りの方位も大きく変化し,日本では太陽は東西方向に対して30°も夏は北寄りに,冬は南寄りに出入する。このために夏は日が長く,冬は短い。春分の日や秋分の日はいわゆる昼夜平分の日であるが,実際は平分ではない。一つには地球大気の屈折作用のために,太陽はつねに多少浮き上がって見えており,日の出入の際にはその量が太陽の視直径をやや上回るくらいであるためである。さらに日の出入は太陽の中心が地平線と一致するときではなく,その上縁が接するときと定義されているからである。この二つの効果を合わせると,太陽の中心が視直径の1倍半余地平線下にあるときに,すでに日の出になることとなる。日本の緯度では,この効果は4分にも達する。すなわち春分,秋分の日には昼は夜より十数分も長いのである。

 もし太陽が天球上の赤道を毎日同じ速さで1°ずつ東へずれていくのならば,東経135°の地点ではつねに日本標準時の正午に太陽が南中するはずである。しかし実際には太陽が1°ずつ東へずれていくのは,赤道と23.°5傾いた黄道に沿ってである。春分点付近で考えると,黄道上で1°動いても赤道に沿っては0.°92しか動かない。これを何日も積み重ねるとその差は相当なものとなる。のみならず黄道上の太陽の速さは決して一定ではない。地球の軌道が楕円だからである。地球は太陽に1月にもっとも近く,7月にもっとも遠い。それに応じて太陽の動きは1月にもっとも速く,7月にもっとも遅い。その差は3%くらいである。このわずかな非一様さも積み重なると,その効果は大きくなる。以上二つの効果の結果として,南中時刻は1年を通じて複雑な変化をする。2月中旬には平均より14分遅く,11月上旬には16分も早くなる。これが均時差である。このため,例えば日の出のもっとも遅いのは1月上旬,日の入りのもっとも早い時期は12月上旬であり,ともに冬至の日には一致しないというような一見矛盾したことが起こる。

 太陽を望遠鏡で観測すると,たいていの場合黒点がいくつか見える。毎日観測を続けると,黒点が太陽の表面を東から西へ移動していくのがよくわかる。太陽は自転しているのである。さらによく調べると太陽の自転軸は黄道面に垂直ではなく約7°傾いていることもわかる。傾きの方位は9月の初めに地球から太陽の北極がもっともよく見える方向である。黒点の観測から自転周期を求めてみると,黒点は赤道に近いほど短い周期で回っていることがわかる(表)。すなわち太陽は剛体の球のように自転しているのではなく,赤道に近いほど速く回っているのである。これを赤道加速と呼ぶ。このように太陽はたえずねじれながら自転しているので,その体内にはたえず歪が蓄積されていく。この歪のエネルギーが太陽活動に重要な意味をもつのである。

太陽と地球の平均距離は1天文単位と呼ばれ,天文学上重要な定数の一つである。天文学の場合測距の基本は三角測量である。ところが太陽の場合,直接三角測量をすることは容易ではない。それは地球上に十分長い基線をとれないからである。そこで太陽に比べてもっと近い惑星や小惑星までの距離を測ったり,その他いろいろなことが試みられてきた。しかし最近のレーダー測距の進歩によって,金星までの距離が,三角測量ではとうてい得られなかった高い精度で測定できるようになり,1天文単位=1億4959万7870kmと国際的に取り決められた。

 地球は太陽のまわりを1年の周期で公転しているが,太陽からどのくらい離れたところを公転するかはほぼ太陽の質量だけで決まり,地球の質量にはほとんどよらない。それは次のように理解される。太陽をほぼ円形軌道に沿ってめぐる地球には,地球の質量に比例した遠心力が働いていて,太陽から遠ざかろうとする傾向がある。この力は軌道が大きいほど大きい。この傾向を引きとめるのが太陽と地球の間に働く万有引力である。万有引力は太陽の質量にも地球の質量にも比例し,また軌道が大きくなるにつれて弱くなる。この2種の力を等しいと置くと,共通な地球の質量が消え,太陽の質量と軌道の大きさの関係が求まるからである。このようにして,1天文単位が決まれば,太陽の質量が万有引力定数を介して決まるのである。現在,国際的に1.9891×1030kgと取り決められている。

 同様に,太陽系のいろいろな公転周期をもつ惑星や小惑星の軌道の大きさは,共通して太陽の質量でほぼ決められているので,軌道の大きさの比は太陽の質量にほぼ無関係となり,公転周期の比だけで決められる。これがケプラーの法則である。すなわちわれわれは諸惑星の公転周期を知るだけでも,一応もっともらしい太陽系の模型を考えることができるのである。さらに進んで離心率その他の諸量を導入することによって,1天文単位の値は知らないでも,惑星の天球上の運動を高い精度で算出することができるのである。これを現実の太陽系にあてはめるには模型の縮尺を知ることだけが残されている。その縮尺を決めるのが,例えば地球と小惑星エロス,あるいは金星との間の距離の測定であり,これがわかれば,模型について計算された距離の相対値から,直ちに地球と太陽の平均距離が求まるのである。

 1天文単位の距離から見た太陽の視半径は16.′0であるから,実半径は1天文単位の約1/200,69万6000kmである。これは地球の半径の109倍に相当する。太陽の質量は地球の33万倍であるから,太陽の表面重力は地球の28倍,平均密度は地球の約1/4,1.41g/cm3である。平均として水よりも比重が大きいのに,太陽全体がガス体であるのは,非常な高温のためである。

気温の日変化や年変化は太陽と地球上のある地点との相対位置の変化によるものであり,その間太陽の放射量自体はいっこうに変化していない。また黒点の増減による変化も微々たるものにすぎないことが長年の観測によって知られている。すなわち太陽の放射量は時間とともにほとんど変化しない定数と考えられる。習慣として,1天文単位の距離で,地球大気の外で,太陽光線に垂直な1cm2の面を1分間に通過する太陽放射のエネルギーをカロリーで表したものを太陽定数と呼ぶ。その最近の値は1.96cal・cm⁻2・min⁻1である。

 太陽の放射は赤色からすみれ色まで広がるだけではなく,赤外線や紫外線にも及び,おのおのの放射に対する地球大気の透明度が著しく異なるので,地上の観測から大気外の値を推定するのは容易でない。にもかかわらず長年にわたる観測から,太陽放射が定数と考えられるほど変化しないものであることが確立されており,その値が最近の地球大気外からの測定値とよく一致することが見いだされている。地球大気外からの観測では地球大気の透明度に対する補正の不確かさがないので,0.1%程度の微細な変化と太陽活動との関係をも調べることができる段階に入った。

 太陽を中心とし,1天文単位を半径とする球面のどの部分をとっても,1cm2当り上記のエネルギーが流出している。この全球面をよぎって流出するエネルギーの総量を考えると,それは太陽表面という球面についても同じはずである。ところがこの球面の面積は前の球面の約4万分の1である。したがって太陽表面の1cm2当りには,太陽定数の4万倍のエネルギーが流出していることになる。これに黒体放射の法則をあてはめて温度を求めてみると,5780Kとなる。これが太陽の有効温度である。

太陽の内部に半径1/4の球面を考えよう。この球面をよぎるエネルギーの総量はいぜんとして太陽表面をよぎる総量と等しい。二つの球面にはさまれる部分ではエネルギーが発生していないからである。しかし,これより半径の小さい球面を順次考えていくと,エネルギーの総量はしだいに減少する。つまり半径1/4より内部の中心核でエネルギーが発生しているのである。ちなみに,太陽の中心では温度は1500万K,密度は水の160倍,圧力は2000億atmにも達する。中心核では宇宙でもっとも豊富に存在する水素の核,すなわち陽子がヘリウム核に変換される熱核融合反応が起こっている。1個のヘリウム核を作るのに4個の陽子が必要であるが,でき上がったヘリウム核の質量は4個の陽子の質量の和より若干小さい。この質量の減少がエネルギーの発生につながり,γ線の形で放射される。放出されたγ線は太陽の内部をかけめぐり,1000万年もかかって表面から光や熱として放出される。現在われわれは実に1000万年も前に発生したエネルギーの恩恵に浴しているのである。中心核での核反応の際ニュートリノも発生する。ニュートリノにとっては巨大な太陽もほとんど素通しである。2,3秒で表面に出て,8分後に地球に降り注ぐ。したがってその量を調べると,太陽の原子炉の現在の状態を知ることができる。実際観測された量は期待される量の数分の1である。この食い違いについては目下いろいろと検討が加えられている。

 上記の核反応によって太陽は毎秒500万tずつ質量を失っている。この割合できたとすると,太陽がほぼ現在の姿になってから現在に至るまでの45億年間に太陽は1/4000だけ軽くなったことになる。すなわち太陽のエネルギーは一応無尽蔵といえるのである。

約50億年前に銀河のどこかにちりとガスからなる雲が漂っていた。雲には濃淡があった。濃いところがなぜかさらに濃くなり,そのちりやガスの相互間の万有引力がしだいに強まり,それらがかってな方向に動こうとするのを抑えて,まとまった集団となった。集団の収縮に伴って重力エネルギーが解放されて内部はしだいに暖まり,圧力が上昇し,収縮の歩みを鈍らせるが,いぜんとして収縮は進む。内部の温度がしだいに上昇して1000万Kに達すると,ついに水素の熱核融合反応に火がつく。太陽という星の誕生である。この原子炉の温度が何度に落ち着くかは,そこに発生した高温高圧によって支えなければならない星の質量によって決まる。質量が大きいほど原子炉の温度は高くなければならない。太陽の場合それは1500万Kである。

 現在,太陽では4個の陽子から1個のヘリウム核を作る反応が起こっているが,粒子の個数が1/4に減ることによって,中心核の圧力が減る傾向が生じている。中心核が押しつぶされないように,太陽は温度を上昇させることによって,圧力の減少を自動的に防ぐ。このためエネルギーの発生量は増加し,太陽はしだいに明るくなり,また膨張していく。計算によると100億年後には明るさは現在の2倍に,半径は1.4倍に増すはずである。

 この時点で今まで燃えていた水素が中心部からまずなくなり,もえかすのヘリウムがしだいに中心部にたまってきて,原子炉は球殻状の層をなして,次々とより上層の水素を食っていくこととなる。この段階に入ると太陽は急速に大きくなり,明るさは現在の500倍に,半径は100倍にもなる。ただし表面温度は下がって赤い星となる。赤色巨星である。やき尽くされてどろどろになった地球から見ると,赤い太陽が空を覆わんばかりの大きさで輝いているであろう。ここまでくると,今までの燃料であった水素はまったく底をついて,もえかすのヘリウムが内部を満たす。燃料切れになった太陽の内部はどんどん重力で収縮し,その結果温度が上昇する。温度が1億Kに達すると今度はヘリウムに火がつく。この反応は激しく,爆発的であり,太陽はおそらくその何割かの質量を失うことになる。身軽になった太陽の中心は適当に冷えてしばらくはヘリウムが穏やかに燃える。しかしやがてヘリウムも底をつき,次の燃料に火がつくというようなことを重ねて,これまでと同じくらい激しいいくつかの変動を経て,多量の物質を消耗して,惑星状星雲になり,白色矮星(わいせい)となる。質量は現在の半分に,半径は1/100に減り,原子エネルギーはすっかりなくなり,高温のために白く輝くが,その明るさは1/1000くらいにすぎない。太陽はやがて光を失った小さな天体となってその生涯を閉じるであろう。

太陽の内部のうち,半径を単位として1/4より内部は原子炉である。そこから外へ向かって7/10に至る層は安定で,エネルギーは放射の形でゆっくりと外へにじみ出していく。時間がかかるのはガスが極度に不透明で高度の保温材であるからである。温度はしだいに下がって7/10の層では200万Kくらいになる。温度が低くなるとガスの保温力はさらに増加して温度の降下率が大きくなる。一般的に,大気の中で仮にある気塊が上昇したとすると,周囲の気圧が低下するために,気塊は膨張して温度が下がる。その下がった温度が周囲よりもし高かったとすると,その気塊は熱気球の原理で上昇を続けるであろう。半径7/10より外の層ではまさにこのようなことが起こっている。これを対流層と呼ぶ。ここでは水素(あるいはヘリウム)が電離されるかされないかの状態にあり,気塊の昇降に従って電離の潜熱が放出されたり吸収されたりして,気塊の温度変化を鈍らせるために,対流の傾向が助長されるのである。対流層では内部からのエネルギーは対流運動に乗って外へ運び出されるが,この対流運動は上層の大気に大きな影響を与える。対流層は太陽表面近くまで広がるが,最後の,深さ数百kmより上層の大気ではエネルギーは再び放射の形で流出する。

太陽はガス体であるのではっきりした表面をもっているわけではない。可視光で見える大気の部分を光球と呼ぶ。大気を垂直に見下ろした場合,見える深さは数百km程度である。これは太陽半径の0.1%にも満たない深さである。大気を斜めに見通すともっと浅い層を見ることになるので,太陽の中心から遠ざかるに従って,われわれはより浅い層を見ていくことになる。事実,太陽は一様な明るさではなく,周辺に向かって暗くなっている。これを周辺減光と呼ぶ。このことから光球の中で温度がどのように分布しているかを知ることができる。最下層から最上層へと,温度は6400Kから4300Kへと減少し,圧力は0.1atmから0.001atmへと下がる。太陽定数から求めた有効温度5780Kは実はその中間に位する。太陽表面の中心における放射の波長分布は約6000Kの黒体放射のそれに近いけれども,若干の有意義な差が認められる。これは大気の不透明度が波長によってわずかに異なるために,波長によって異なる層を見るためである。同じような事情は波長別の周辺減光にも現れる。このようにして得られた不透明度の波長変化はわずかで,地球大気のように夕焼けや青空を現出するような著しい変化ではない。吸収の主役は中性水素原子に電子が1個余分についた水素の負イオンである。

 太陽放射の波長分布をもっと詳しく調べると,上記の連続スペクトルに何千という多数の吸収線があることがわかる。これがフラウンホーファー線である。これらは種々の元素に固有のスペクトル線であり,吸収の強さを測ることによって,光球のモデルに基づいて,元素の量を導き出すことができる。その結果,ヘリウムを除けば,光球大気はほとんど水素で構成されていて,わずか1/1000がその他の多数の元素で占められていることがわかる。このようにして導き出された元素の存在比は恒星から求められたものともほぼ一致し,宇宙を理解するうえにも重要な役割を果たす。

 吸収線が現れるのは,吸収線の波長の光に対して光球がとくに不透明だからである。光球がまさにその波長の光を吸収する元素を含んでいるのであるから当然であろう。不透明だから浅いところまでしか見えない。そこでは温度が低い。したがって吸収線の波長の光はその両脇の波長の光に比べると弱く,あたかも吸収されたように見えるのである。このようなわけで,スペクトル線の解釈からも光球のモデルが検討できる。光球のモデルは,エネルギーが放射の形で流出しているという放射平衡と,大気が静水平衡にあるという仮定から,今までに述べた種々の観測に合致するように導き出され,ほぼ完成の域に達しているといえよう。

 黒点や白斑は光球の現象であるが,その外に,太陽像の良好な場合には,粒状斑が光球のほぼ全面を覆っているのが認められる。これらは1000km程度の大きさのふぞろいな多角形の構造であり,そのおのおのは8分くらいの寿命をもっている。スペクトル写真をとると,フラウンホーファー線はまっすぐな直線ではなく,ドップラー効果のためにジグザグに見える。このことは粒状斑の気体が1km/s程度の速さで,その中心部で上昇し,縁で降下する運動をしていることを物語っている。このように粒状斑は光球のすぐ下にある対流層の最上層に達した気塊の運動のありさまを表していると考えることができる。

 さらに太陽大気は規則正しい振動もしている。太陽面上の任意の一部の領域について,スペクトル線のドップラー効果による偏移を長時間観測することによって,太陽の全面が,数千kmから数万kmにわたる種々な大きさの領域に分かれて,大きさに応じて平均5分くらいの周期で振動していることが判明してきた。この振動は対流層まで含めた大気が一種の楽器のように特有の音色を発していると見ることができる。したがって振動を詳しく調べることは対流層を打診することにつながり,地震波によって地球内部の診断ができるのと同じように,太陽の内部についての手がかりが得られると考えられている。事実対流層の底は今まで考えられていたよりずっと深く,半径の7/10まで達していなければならないし,またそれより中の太陽の部分は表面よりも速く自転しているのではないかというような考えも出始めている。

皆既日食のとき,太陽が月に隠されていき,ダイヤモンドリングが消えた途端に,接触点に近い月の周囲に沿って紅に輝く薄い層が見える。これが彩層である。10秒も経つとこの薄い層は月に隠されて見えなくなり,コロナといくつかの紅炎だけが残る。太陽を目で見てもこの層はとうてい見えない。素通しに近いからである。しかし光球に現れるとくに強い吸収線,例えば水素のHα線やカルシウムのK線などの光で見ると,厚さ数千kmの彩層もたいへん不透明で,まさにこの層を見ることになる。スペクトロヘリオグラフや単色フィルターを用いて得られるこれらの線の単色像は彩層の景色を表している。単色像でもっとも印象的なことは彩層が実にさまざまな明暗の模様で覆われているということである。まず目につくのは黒点群を囲む巨大な明るいプラージュである。白斑よりも広くりっぱである。また黒点に近いところでは線状の模様が放射状,あるいは渦巻状にのたうちまわっている。このような細かい線状の構造はたぶん磁力線に沿って現れているのであろう。太陽光球の縁には大小さまざまな,いろいろな形の紅炎が炎のように噴き出している。長い紅炎が太陽の縁にまつわりついている場合には,光球の外では明るく,中へ入り込んだ部分は暗条として見えるようすがよくわかる。光球には長い暗条がミミズのように何本か横たわっているが,これらは実は紅炎の俯瞰(ふかん)図である。光球の縁に沿っては紅炎以外に無数の超小型の紅炎が林立しているようすが像の良好なときには見える。これをスピキュール(針状体)と呼ぶ。これらも太陽の表面では多数の短い暗条として認められる。

 さらに単色像には太陽面が粗い網目模様で覆われているようすが見える。網目の大きさは3万km,すなわち,太陽の直径の1/40くらいの大きさである。おのおのの網目の中心から周に向かって1km/s足らずの水平方向の流れがあり,周では2km/sくらいの速さでガスが降下している。つまりこれも対流運動である。よってこれを超粒状斑と呼ぶ。超粒状斑の周はよく見ると微小な明点の密集地帯であり,スピキュールも集まっていて,あたかも磁力管が水平方向の流れで周へ掃き寄せられたかのように見える。おのおのの超粒状斑は1日も経つと識別がつかなくなる。

 皆既日食のときに撮れる彩層のスペクトルは輝線スペクトルである。それは背景に光球がないからである。この輝線スペクトルは光球の吸収線スペクトルの明暗を裏返したようなものである。すなわち,光球の強い吸収線は彩層でも強い輝線として現れる。励起の状態に大差がないためである。つまり温度が光球の延長上にありとくに激しい増減がないことを物語っている。しかし例えば光球では認められないヘリウムの線が強く現れることなどから,上層へ向かって高温のコロナへの移行が始まっていることが想像される。おおまかにいうと,彩層の温度は下から上へ,5000Kから8000Kへと上昇し,圧力は1万分の1atmから100万分の1atmへと減少する。

 彩層に現れるもっとも劇的な現象はフレアである。典型的な例では,単色像で見ていると,プラージュの一部が数個の斑点状に,見る見るうちに非常に明るくなり,点がつながって2本の紐状になり,紐の間隔が広がり,やがてゆっくりと数十分かかって明るさが元に復する。時を同じうして太陽電波に種々なじょう乱が生じ,X線が増加し,地球上では電離層に異常が起こり,デリンジャー現象が起こる。さらに1日余おくれて極地方にオーロラが現れ,地磁気あらしが起こる。この現象は単色像でもっとも観測しやすいのであるが,本質的にはコロナに蓄えられた磁場の歪みのエネルギーが解放される現象と考えられているので,後出〈太陽活動〉の章で詳述する。

コロナ

皆既日食の際光球が月に完全に隠されたときに,白色に輝く光芒状の光冠が見える。これがコロナである。明るさは光球の100万分の1でほぼ満月の明るさである。その99%はそれ自身の発光ではなく,光球の光がコロナの自由電子によってほぼ直角の方向に散乱されたものである。したがって色は白く,かつ偏光している。たいへん希薄で1億分の1atm,密度にすると実験室で到達しうる最高の真空度に相当する希薄さである。

 コロナは太陽の縁から遠ざかるにつれて明るさを減じ,半径くらい離れたところで1/200に減光し,前景にある黄道光の明るさがその半分を占めることとなる。黄道光は惑星間空間に分布するちりによって太陽の光が散乱されたもので,これも白色であるが,この方向では偏光していない。そのスペクトルは光球のスペクトルそのもので,多数のフラウンホーファー線が認められる。これをFコロナと呼ぶ。いわばにせのコロナである。これに対して太陽のコロナは同じ散乱光であっても,7000km/sにも達する自由電子の激しい熱運動のためにドップラー偏移が著しく,フラウンホーファー線はほぼ完全にかき消されて一見連続スペクトルのように見える。よってこれをKコロナと名づける(以後コロナと呼ぶ)。

 コロナの可視光の明るさの1%はコロナ自身の発光であり,輝線から成り立っている。これらは十数個の電子を失った鉄その他の元素によって放射される。以上の諸特性からコロナは100万Kをこえる高温にあることがわかった。メートル波で太陽を見ると,希薄なコロナすらたいへん不透明でコロナだけしか見えないが,電波の観測もコロナの高温を示唆している。

 可視光の輝線は総量がわずかであるが,それは輝線の線幅が狭いからであり,輝線の波長の光では連続光の何十倍も明るいものがあり,活動領域ではもっと明るい。高山に設置されているコロナグラフはこの事情を利用したもので,いわばコロナ輝線の単色像を常時観測するための装置である。

 彩層が光球の延長程度の温度であるのに,それに接しているコロナが100万K以上の高温であるのは意外であるが,実はその間をつなげるたいへん薄い層があるのである。このことは,地球大気外からの観測で,数万Kから数十万Kにわたる種々な温度で発光する,種々な電離度のイオンの輝線が多数観測されることによって確かめられている。しかし,境界層のある場所や形状についてはまだ定説がない。

 太陽内部から外に向かって温度がしだいに下がってきたのに,その外のコロナで温度が急増するのはなぜか,現状では十分具体的な説明がなされていないけれども,対流層の運動のエネルギーが磁場を介してコロナに流れ出す過程で,イオンや電子の運動のエネルギーに変換される,すなわち熱化される結果であると考えられている。

 コロナの輪郭は黒点の極大期と極小期で異なり,前者では円に近く,後者では赤道方向に扁平な楕円形になる。いずれにしても輪郭は単純ではなく,多数の光芒から成り立っているように見え,しかも幾本かの顕著な光芒,ストリーマーが長く伸びているのが認められる。また低いところではアーチ形の構造が随所に見られる。これらはすべてコロナの磁力線に沿った構造なのである。コロナは高温であるために,その最外層のガスを引力で引きとめておくのがむずかしい。そのためにコロナからは絶えずガスが流出していると考えられている。事実人工衛星からの観測で,地球付近で数百km/sというガスの流れがあることが知られている。これが太陽風である。さらにこの風は間欠的に強くなり,それが,地磁気のじょう乱と同じく,27日の周期である期間繰り返されることが判明している。

 地球大気の外からX線で太陽の写真を撮ると,光球は低温のためまったく見えないで,温度の高いコロナの全貌がとらえられる。すなわち,コロナの俯瞰図が得られる。こうした図形において,コロナにはときとして巨大な欠損部があることが発見された。これがコロナホールである。上記の間欠的に強い太陽風の根もとを逆にたどると,実はこれらのコロナホールに行き着くのである。コロナホールから流れ出したとくに強い太陽風が,太陽の自転につれて27日の周期で地球に吹きつけられるのである。おそらくコロナホールでは磁力線がアーチ状ではなく外へ射出した,ガスやエネルギーが流出しやすい形をしていて,下からの運動のエネルギーが十分に熱化されないまま,強い太陽風として宇宙空間に放出されるのであろう。事実コロナホールでは温度も密度も周囲よりやや低いのである。

太陽活動は11年を周期として盛衰を繰り返す。これをもっとも端的に表すのが黒点相対数である。黒点は3000ガウスという強い磁場をもっていることがスペクトル線のゼーマン効果から知られている。黒点はふつう東西に並んだN極とS極の対として現れるが,極性の東西関係は南北半球で逆であり,また11年ごとに南北の極性関係が入れ替わる。したがって太陽活動の周期は22年であると考えるほうが妥当である。

 黒点の強い磁場は太陽自転の赤道加速によって作られる。太陽内部に南北方向に磁力管が横たわっていたとすると,自転につれて低緯度の部分が先回りして,磁力管はしだいに東西方向に寝ていき,伸ばされて,太陽の周に鉢巻のように巻きつくことになる。磁力管が伸ばされると断面は小さくなり,磁場は強くなる。磁場を含んだ気体は磁場の圧力をもつために,周囲の気体より密度が小さい。したがって浮き上がる傾向をもっている。東西に引き伸ばされた内部の磁力管の一部はこのようにして浮上する。磁力管の一部がコロナまでもち上げられたと想像すると,光球面に磁力管の断面が1対の黒点として現れるであろう。

 黒点の根は深く対流層にまで達している。一般に電離されたガスは強い磁場を横切って運動することができない。動くためには磁場を引き連れて動かなければならない。したがって黒点の直下では対流運動は強く抑えられる。そのために内部からのエネルギーの流出が少なく,温度が低く,周囲に比べて暗く,黒点として見えることになる。対流層の深いところでいわばふたをされた結果,内部からのエネルギーはそのわきを通って外へ出てくる。黒点のまわりの白斑やプラージュ領域には,こうした余分のエネルギーがばらまかれているのであろう。太陽内部では磁力管は気体の運動のままに振り回される。磁力管をこねまわす気体の運動は上記の赤道加速だけではなく,もっと複雑なものである。粒状斑や超粒状斑に象徴される運動もあれば,太陽を数葉の子午面で分割した超特大の対流運動も考えられる。いずれにしても,内部の磁力管の束はきれいなそうめんの束のようなものではなく,曲がったり,ねじれたり,ささくれ立ったりしたぼろぼろの古縄のようなものになっているであろう。このような縄の一部が光球を貫いて上昇していくと,その断面はきわめて複雑な様相を呈するであろう。これが黒点の複雑な形やその時間変化に対応しているのである。

 コロナに押し上げられた磁力管はもはや気体にもてあそばれない。コロナが希薄だからである。ここでは気体が磁力管のあるがままに,それに沿ってしか動けない。新しく浮上した磁力管はすでにコロナを埋めている磁力管との間に新しい力の均衡状態を見いださなければならない。この葛藤(かつとう)の間に磁場の歪みとして蓄えられていた莫大なエネルギーがときおり爆発的に解放されるであろう。これがフレアである。

 フレアの発火点はコロナの中にあり,ループ状の磁力管の頂点である。その温度は数千万Kに達し,鉄の原子を例にとると,そのもっている26個の電子のうち,1個または数個を残してほとんどはぎ取られた状態にあることが,地球大気外からのX線の観測からわかっている。ここで発生した高速粒子は磁力管に沿って降下し,彩層や光球をたたいて,光のフレアやγ線バーストを発生したりする。さらに彩層からは多量のガスがループ状の磁力管の中に蒸発して,そこからもX線が放射され,やがて末期にはループ状紅炎を形成する。ループは単一ではなく幾本もあり,低いものから順次高いものへ着火していくと考えられている。またループの根もと付近からは加熱の衝撃でサージと呼ばれる高速の紅炎が噴出することがある。発火点からは太陽電波のマイクロ波バーストが発生し,そこから派生したコロナのじょう乱は,センチメートル波およびメートル波領域でいろいろな種類のバーストを起こす。これらのあるものはコロナに発生した衝撃波の波面で励起されたプラズマ振動によって放射され,あるものは高速の電子が磁場にまつわりつくように運動することによって放射され,またあるものは電子が高速でコロナの外へ出ていくようすを示す。

 太陽の自転は黒点で調べると赤道加速があり,周期が緯度によって27日から30日まで変化する。それにもかかわらず,太陽面上の活動領域を長期間にわたって観測すると,その持続性がよく,自転の何周期にもわたって,太陽面のある経度に固定しているように見える。この矛盾は例えば次のように解釈できる。太陽内部には太陽を数葉の子午面で縦切りにしたような大規模な対流運動があり,それが自転の影響を大きく受ける結果,ガスは低緯度では速く高緯度では遅く流れることとなり,ガスに乗せられた黒点は赤道加速を示すと考えるのである。またこのような大規模なプラズマの流れが磁場を引き連れて動いていると,電磁流体発電の作用が発生し,太陽全体の磁場がゆっくりと変形を受け,11年あるいは22年の太陽活動の変化を生ずることも可能であると考えられている。

太陽はその明るさ,表面温度,大きさ,質量のいずれを考えても,平均的で平凡な恒星にすぎないのであるが,そのために両者には多くの共通点がある。恒星はどんなに近いものでも点にしか見えないが,太陽は見かけの大きさが大きく,表面を詳しく観測できる唯一の恒星である。事実太陽を詳しく研究し,恒星を広く調べることによって太陽と恒星の物理学は進歩してきたのである。

 太陽に彩層があるように,恒星にも彩層がある。しかも太陽よりもっとりっぱな彩層が多数の恒星にある。これらの星でカルシウムのK線の吸収線中心部に現れる輝線がそれを物語っている。これらは表面温度がどちらかといえば太陽よりも低い星であり,太陽よりもっと大きく希薄な巨星や超巨星であることも多い。これらの星は太陽と同じく対流層をもっており,その副産物として彩層をもっているのである。輝線の幅から想像される彩層の運動の激しさは,主系列星から,巨星,超巨星へと増大していく。これは同じ表面温度を達成するためには,希薄な大気ほど,対流運動が激しくなければ必要なエネルギーを運び出せないという事情と合致している。また多くの恒星が太陽活動の11年周期に似た周期的な変動を示すことも明らかにされつつあるし,フレアも多くの恒星で見つかっている。

 コロナもまた恒星にある。地球大気外からのX線の観測から推測されるのである。コロナの高温は対流層の運動のエネルギーが熱化されるためであると考えられてきたので,太陽よりも低温の,彩層をもった恒星で,コロナを引きとめるに足る表面重力をもつ主系列星にだけ存在すると想像されていたのであるが,最近のX線の観測で,もっと高温の星にも,また巨星や超巨星にもコロナが存在することが確かめられ,従来のコロナについての考え方に大きな修正を迫られている。
光球 →太陽スペクトル →日食 →フレア
執筆者:

太陽については事実上どの民族も何らかの神話や信仰をもっているといってよい。しかし,19世紀末に唱えられたような,すべての神話は太陽神話であるというのは明らかにいきすぎであって,太陽と無関係な神話も多い。

太陽の起源についての神話のおもなものは,(1)地上から投げ上げられた物体が太陽になった,(2)地上の人間が死んで太陽となった,(3)原初の巨人の目玉が太陽になったの3種がある。(1)の型は月についても語られることが多く,また世界の採集狩猟民に広く分布し,人類文化史的にみて古いものと思われる。例えば,中央カリフォルニアのガリモメロ族によれば,原初の暗黒のとき,鷹とコヨーテは可燃性のボールを2個集めた。鷹はこれらをもって天にとび上がり,火打石の火花で火をつけ,太陽と月になった。(2)の型は農耕民に多いが,採集狩猟民にもある。ポリネシアのハーベー諸島の神話は,太陽と月はもともと1人の子どもだったが,両親により二つに切断されて天に昇ったものという。(3)の型は世界の古代文明地帯とその影響圏に多い。中国の原初の巨人盤古(ばんこ)が死んで,その左目が太陽,右目が月になったのもその一例である。《古事記》に,伊邪那岐(いざなき)命が黄泉(よみ)から帰ってみそぎをしたとき,左目を洗うと天照大神(太陽),右目を洗うと月読命(月)が生まれたとあるのも,この形式の変種である。

 太陽は天を横断して毎日運行している。運行のしかたとしては次の3種が広く分布している。太陽が(1)鳥として,(2)舟に乗って,(3)馬車に乗って運行する。(1)の型は分布がきわめて広く,古いものと思われる。太陽の中に3本足のカラスがいるという中国の観念もその一例である。(2)の型は古代エジプトにもあったが,東アジア,東南アジアでは金属器時代に盛んになったものらしい。例えばベトナムの青銅器時代から初期鉄器時代のドンソン遺跡の古式銅鼓における上部表面中央の星形は太陽を表し,周囲の人物や動物も太陽と同じ方向に回って,それぞれ太陽またはその属性を表し,銅鼓の側面に表された舟は,太陽を乗せた舟であるというコラニM. Colaniの説がある。日本でも,松本信広によれば福岡県珍敷塚(めずらしづか)古墳の壁画に描かれた舟は太陽の舟であるとされる。(3)の型はインド・ヨーロッパ語系の諸族の世界に広く見られるほか,古代中国にも波及していた。古代ギリシアでは太陽は戦車に乗って天かけると信じられていたので,ロドス島民は戦車と4頭の馬を毎年太陽にささげ,その用に供するために海に投げこんだ。つまり,太陽は1年間の運行で,その馬も戦車も使いつぶしてしまうと考えられていたのである。中国の《淮南子(えなんじ)》天文訓によると,羲和(ぎか)という女が6頭の駿馬のひく馬車を御し,この馬車に太陽を乗せて天空を運行するのだという。また太陽の運行は,月の運行としばしば関連づけられる。カフカスのグルジア族の伝承によると,神が兄と弟にどちらか一方が昼の天体(太陽)になり,他方が夜の天体(月)となるように命じた。決められた日に早く起きたほうが太陽となるよう取り決められた。兄は早起きして太陽となり,母は寝坊の弟息子に腹をたて,パンをこねる粉のついた手でそのほおを打った。こうして月の斑点ができた。南アフリカのカフィール族によれば,月が欠けるのは,月がいつも太陽に追いかけられて,くたびれると生ずる現象である。

 太陽の正常な運行は人間の生活に秩序を与えてくれる。しかし,かつては太陽の運行があまり速くて困ったので,ある英雄が太陽にわなをかけて,その速度を遅くしたという形式の神話が,ポリネシア,北アメリカなどに分布している。日本ではむしろ,太陽があまり速く沈むので,田植が1日で終わらないことを心配した長者が太陽を招き返したが,この無礼なふるまいの罰として没落させられたという伝説が,鳥取県の湖山(こやま)長者その他について語られている。また,多数の太陽が(ときには多数の月も)天にあったため,暑すぎたり昼間ばかりだったりで,困った人間が太陽(月)を一つだけ残して,あとはすべて射落としたという神話は,中国を中心としてシベリアの一部,東南アジア,北アメリカ西部に分布している。ブリヤート・モンゴル族の神話によると,ブルハン・バタン神は一つの大きい太陽と二つの小さい太陽を作り,いっさいのものを焼きつくそうとした。神は名射手カラ・エルヒェ,ミルゲンを呼び,三つの太陽すべてを射当てられるかと問うた。射手は射当てられると約束し,失敗したら手足の親指を切断し,まだ創造されていない動物に変身して,地下に6ヵ月暮らすと誓った。神が真ん中の太陽を隠してしまったので,射手は約束どおりモルモットに変身した。古代中国の羿(げい)も射日英雄である。太陽が隠れてしまったため,人々がこれを引き出して秩序を回復した神話は,アッサムから中国南部,さらに北アメリカ西部に広く分布しており,日本の天の岩屋戸神話もその一つである。

日食の起源についての神話や観念は,(1)怪物が太陽をのみこむ(月をのみこめば月食),(2)太陽が病気になるため,(3)太陽と月が夫婦で,2人が性交したりけんかするためなどの諸形式がある。例えば,太陽が怪物にのまれて日食が生ずる形式は東南アジアにも多いが,アッサムのクキ族の一派,アナル族に次のような神話がある。むかし牝犬を飼っている信心深い男がいたが,太陽と月はこの男が徳をもっているのをうらやみ,だまして徳を奪って天に逃げた。聖者は愛犬に泥棒を追いかけて捕らえるように命じた。犬は長い棒をもってきて,犬と聖者はこれを登っていった。しかし聖者が天に達する前にシロアリが棒の下の部分を食べてしまったので,聖者は天から落ちて首の骨を折って死んでしまった。しかし犬は聖者よりも敏しょうだったので,ひと足さきに天に達し,今に至るまで太陽と月を追いかけまわしている。ときに牝犬が彼らを捕らえることがあるが,そのときに日食や月食が起きる。するとアナル族の人たちは天の牝犬に向かって,〈放してやれ,放してやれ〉とどなる。日食や月食が超自然的なネコ科動物,ふつうジャガーが襲うため生ずるという信仰は,南アメリカの諸民族(ユラカレ,モホ,チキート,グアラニ,インカなど)に分布している。

 日食や月食が,太陽や月が病気になったり,気絶したり,死んだために生ずるという民族は,スマトラのミナンカバウ族,アフリカのコイ・コイン,南アメリカのアラチカノ族などの例がある。日食や月食を夫婦関係で説明する例は,太平洋のタヒチ諸島,ドイツのオーバーファルツの農民などにあるが,西アフリカのフォン族もその一つである。フォン神話によれば,原母ナナ・ブルクはマウとリサの双生子を生んだ。マウは月で女,夜を支配して西に住み,リサは太陽で東に住んでいた。最初,日月が別々のところに住んでいたときには2人の間に子どもは生まれなかったが,しまいに日月食のときに太陽と月はいっしょになった。だから今でも日食や月食があるとマウとリサが性交しているのだといわれる。その変種として,東南アジア大陸部では,次の形式の神話がある。太陽と月は兄弟あるいは姉妹だったが,その下にもう1人弟か妹がいる。この下の弟(妹)は行いが悪い。上の2人は死後,太陽や月になったが,下の弟(妹)は死後,怪物になった。日月食はこの弟(妹)のために生ずるという形式の神話である。日本の天の岩屋戸神話はこの形式に入る。

 太陽崇拝は,採集狩猟民の世界にも見られることもある。北海道のアイヌは日食や月食のときに,大地を踏みとどろかせ喚声をあげて光の神の危急を救おうとした。しかしアイヌはふつう太陽神や月神に木幣(ヌサ)をあげることはほとんどない。ただ釧路と十勝の一部では,もっとも太くてりっぱな木幣を選び,その表面に太陽の形,裏面に雷神の形を刻むことがある。この太陽の形を刻む地方では,湖沼に生えるヒシの実が重要な食料で,秋にヒシの実が実るときの祭りに,太陽神に木幣が供えられる。ザバイカル地方のツングース族では,太陽は下位神の中ではいちばん尊いので,しばしば至高神と混同されるほどである。狩人は獲物をとると,太陽に向かっておじぎをし,短い祈禱(きとう)をあげて,その頭蓋を木につるす。また遊牧民のブリヤート・モンゴル族のように,太陽と月にはそれぞれ女神が住んでいるが,どちらも人間に対して好意的だから,とくに崇拝することは不必要だと考える民族もいる。

 一般に,太陽崇拝が盛んなのは古代エジプト,古代インカ,現代ではインドのドラビダ諸族,東部インドネシアなど,かなり高度に発達した文化をもつ民族に多く,かつ王権と太陽祭祀が結びつくこともしばしばである。太陽の女神,天照大神を皇室の祖神とする日本もその一例である。南アメリカでは太陽崇拝はインカ帝国で発達しており,太陽は王家の祖先神とみなされていたし,またインカ帝国は征服した諸民族にも太陽崇拝を強制した。インカの支配領域のいたるところに,太陽神のための神殿が建てられたが,帝国の首都クスコの太陽神殿では,太陽は巨大な黄金の円盤で表されていた。ところが古代ペルー以外,南アメリカには太陽崇拝の例はきわめて少なく,多くの場合,太陽は単なる神話中の登場人物の1人(月とともに双生子と考えられることも多い)にすぎなかった。
執筆者:

古代において統一と神性の象徴とされた太陽は,西洋のシンボリズムの体系の中で重要な位置を占めている。ギリシア神話でヘリオス,アポロンと同一視される太陽は,錬金術では金属位階の最高にあるとしばしば等置された。ドイツの医師・錬金術師M.マイヤーによれば,地球の内部に宿る黄金は天空に輝く太陽の似姿にほかならない。太陽は地球の周囲を回転しつつ,影響力を地心に及ぼし,己が像を黄金として刻印したのである。しかも,太陽は神性の象徴であるから,神は黄金の内部に顕現し,黄金において認識されることになる。これが〈通常の黄金〉と異なる〈真の黄金〉で,神的ないぶきをはらむその霊妙な性質のため,これを〈賢者の石〉そのものとみなすこともあった。錬金術の化学過程を示す図像では,太陽は三原質の一つである〈硫黄〉の象徴とされることが多い。この場合,三原質のもう一つの元素である水銀は月で表され,物質の結合と変容のプロセスは,男性である太陽と女性である月との交合図ないしは婚姻図で表された。したがって,この結合から生ずる錬金作業の原材料は,太陽と月の性質を兼ね備えた両性具有とみなされる。また,金属変成の最初の困難な段階とされる〈黒化〉の象徴として,〈黒い太陽〉が用いられることもあった。この過程における物質は,金属が純化され黄金となって復活するための準備段階として,死,腐敗の状態にあり,すなわち光り輝く太陽の反像と考えられたからである。(図)

 占星術では,太陽は活力の象徴で,吉位にある場合は長寿と健康,富と名誉を保証し,勇気,誠実,善意などの性質を授けるが,逆に凶位に立てば,失意,苦難,病気,零落をひき起こす。また,自然を大宇宙(マクロコスモス),人体を小宇宙(ミクロコスモス)とみて,両者の間に対応関係を設定する占星術的医学では,太陽はおもに心臓を支配する。なぜなら,心臓は人体の内部に刻印された太陽であり,地球内部の黄金に対比されるからである。その他の支配部位としては,目,脳髄,神経,身体の右半分が振り当てられている。

執筆者:


太陽 (たいよう)

博文館発行の月刊誌。1895年1月創刊。《日本大家論集》の大成功で種々の雑誌を事業の柱の一つとしてきた博文館が,94年末に政治・経済関係の雑誌を廃刊して,日清戦争後の社会変化に対応した総合雑誌として創刊した。四六倍判,本文200ページ,写真版10ページ,定価15銭。96年から99年までは月2回刊で菊判,1900年から月刊に戻って菊倍判,01年から四六倍判に戻る。初代主筆は坪谷水哉(善四郎,1862-1949)で,以後は高山樗牛(ちよぎゆう),鳥谷部春汀(とやべしゆんてい),浮田和民,長谷川天渓(誠也),平林初之輔ら。論説,政治・経済,文芸などを軸に,内容は広範にわたった。執筆者も各分野の知名人を網羅し,また各界の名士二百数十名よりなる太陽名誉賛成員を掲げ,〈一に国運隆昌の反影を表示するを期し,毫も政治主義の同異に関せず,専ら公平不偏を以て立つ,故に名誉賛成員各位が世に公にするを欲し玉ふ意見は《太陽》最も歓んで登載〉することを編集方針にして,大正前半期まで総合雑誌の王者であった。しかし日露戦争を前にして台頭してきた国家膨張主義に迎合する方向がとられ,社会主義運動や大正デモクラシーに対応しきれず,《中央公論》《改造》にその地位を奪われ,28年2月,第34巻第2号(通算530冊)をもって廃刊に追いこまれた。本誌のほか臨時増刊66冊を発行したが,そのおもなものに〈博文館創業十周年記念〉(1897),〈明治十二傑〉(1899),〈明治史〉(1904),〈明治名著集〉(1907)などがある。

同名の雑誌は1942年7月朝日新聞社から発行され(1945年4月,第34号で休刊),また46年1月太陽社から,さらに57年10月筑摩書房から発行されたが継続しなかった。その後63年6月,平凡社からカラー写真を主にした日本最初のグラフィックな総合雑誌《太陽》が創刊された。月刊,A4判変型,創刊号は200ページ,定価290円。同年12月,組写真によるドキュメンタリーを対象にした〈太陽賞〉を創設,第1回の荒木経惟をはじめ写真界に人材を送り,新人カメラマンの登竜門となっていたが,2000年に本誌は休刊となり,〈太陽賞〉も休止となった。なお72年11月,ムック形式による《別冊太陽》を創刊,現在におよんでいる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「太陽」の意味・わかりやすい解説

太陽
たいよう
sun

地球から最近距離にある恒星。地球を含む八つの惑星がその周囲を公転する。地球から見た視直径は約 32′,地球からの平均距離は約1億 4960万 km,半径 69万 6000km。質量 1.989× 1030 kgで地球の約 33.3万倍。平均密度は水の約 1.4倍。表面重力は地球の約 28倍。見かけの光度-26.74等,絶対光度 4.83等,スペクトル型 G2。ヘルツスプルング=ラッセル図上で主系列晩期に属する。輝く光球の表面を,厚さ数千 kmの彩層すなわち大気層が覆い,その上に高さ数百万 kmまでコロナが広がっている。光球面には約 11年周期で盛衰する黒点群が観測され,それによって太陽は約 26.90日周期で自転していることがわかる。太陽中心部の温度は 1500万K (→ケルビン ) に近いが,太陽表面の温度は約 6000Kに過ぎない。これは恒星の温度としてみると平均的な値である。太陽の光球表面に現れる放射の分光分析により,光球表面の組成は,90%が水素,9.9%がヘリウム,残りは鉄,カルシウム,ナトリウムなどの少量の重元素混合物で構成されることが明らかになっている。内部の核融合により構成物質をある程度変化させているはずではあるが,表面の組成比率は太陽を形成する素材の化学的構成を反映していると考えられる。太陽は太陽系の主要な物体であり,太陽系全体の質量の 99%以上を占めている。
太陽は質量が非常に大きいため,重力により構成物質が強く圧縮され,中心部では圧縮された気体が高温になって核融合が引き起こされている。太陽内部における核融合反応は熱核反応のうちのp-p連鎖で,激しい熱と圧力により水素原子核陽子は次々と別の陽子と衝突して結合し,より安定したヘリウム原子核を形成する。このヘリウム原子核の質量は,もとになった陽子の質量の合計よりもわずかに小さく,減少した分の質量がエネルギーとして放出される。そのエネルギーは毎秒 3.86× 1033エルグにも達する。エネルギーは最初にγ線として放出されるが,この電磁放射は中心から光球表面へ達するまでに途中に存在する物質と何度も相互作用を繰り返し数十万年以上経た後,おもに可視光線赤外線といったかたちで表面へ出てくる。太陽のp-p連鎖の副産物の一つに質量がきわめて小さく電荷をもたないニュートリノがある。この反応で放出されるニュートリノを地球で検出するための実験結果によれば,予測されるニュートリノの数の3分の1しか見つかっていない。この結果は,最終的な確認はまだなされていないが,質量の違う3種類のニュートリノの間で振動を起こしている可能性が強く示唆されている。
光球の外観は,太陽黒点の数を増減させながら,継続的に変化し続けている。太陽表面の黒点領域はさしわたし5万 kmほどの大きさがあり,そこでは強力な局所的磁場が光球の通常の対流運動を阻害している。黒点内の気体温度は周囲より約 1500K低く,黒点は太陽円盤を背景に暗く見える。光球表面の黒点観測から太陽はゆっくりと自転していることが示されているが,太陽の実体は気体状態なので赤道領域を最速として緯度ごとに異なる角速度で回転している。極では1回転に 36日かかるが,赤道では 25日である。さらに詳細な研究から光球は一定の運動をしていることが判明している。これは,1000kmの幅をもつ粒状斑がさらに網状構造になって超粒状斑として現れてくるというもので,エネルギーの出現に伴い文字どおり泡立ちを起こしている。磁気活動は太陽の内層大気である彩層内および外層大気のコロナの中へ広がっている。強い磁場のある超粒状斑の周縁からスピキュールと呼ばれるジェット流が,光球表面から上方へ約 7000kmの高さにまで達している。太陽を包む明るい被覆であるコロナの中では局所的な磁場の突然の変化により紅炎 (プロミネンス) が形成されるが,これは原子イオン電子を捕捉して光を発しているコロナ物質が炎のような突出構造をとったものである。黒点領域における磁場の急激な発達に伴った激しい噴出現象であるフレアにより,ガスがコロナの中へ噴射されることで,環状紅炎と呼ばれる別の現象が生じる。こうした噴出現象では初めに高速の電子と原子核の流れが放出され,次いで二次的な,紫外線,γ線,X線の放射が起こる。フレアはコロナからの継続的な荷電粒子の流出物である太陽風の強さを増加させる。太陽風は毎秒 350kmから 700kmの速度で惑星間空間を動き,少なくとも太陽系内の海王星の軌道まで達している。
太陽の活動周期は,太陽黒点,紅炎,フレアの数が最少から最多まで増加し再び減少するまでの期間のことで,約 11年間の周期長がある。この周期は数万年もの間,規則正しく繰り返されており,太陽が実質的に不変であったことが判明している。今後 50億年の間,太陽は寿命の後半にさしかかり赤色巨星へと膨張するときがくるまで,劇的な変化もなく経過すると予想される。

太陽
たいよう

(1) 博文館が 1895年1月創刊した総合雑誌。それまで刊行していた『日本大家論集』『日本商業雑誌』『日本農業雑誌』『日本之法律』『婦女雑誌』を廃して『太陽』を創刊した。歴代の編集長に高山樗牛,浮田和民,長谷川天渓らの逸材を得たこともあって,島崎藤村,国木田独歩,徳田秋声ら自然主義作家の活躍の舞台にもなり,大いに世に迎えられた。しかし明治という限界をもち,大正デモクラシーの波に乗れず,『中央公論』や『改造』などに席を譲って,1928年2月終刊。 (2) 57年 10月から 58年2月まで筑摩書房が刊行,63年6月以来,平凡社が誌名を受継ぎ,月刊のグラフ雑誌を刊行している。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「太陽」の意味・わかりやすい解説

太陽【たいよう】

月刊総合雑誌。博文館発行。1895年1月―1928年2月。臨時増刊号86冊を含め全531冊。日清戦争時の国威高揚に呼応し,刊行中の雑誌を統合して創刊。同時に《少年世界》《文芸倶楽部》を発刊し,雑誌王国博文館の雑誌を3種とした。主筆は高山樗牛,坪谷水哉,鳥谷部春汀,長谷川天渓平林初之輔ら。政治,社会の論評を主とし,文芸方面でも田山花袋上田敏らが寄稿。大正初期まで権威ある総合雑誌として君臨し,樗牛中心の日本主義,天渓中心の自然主義,平林らのプロレタリア文学関係の評論が展開された。大正デモクラシー隆盛の時期に《改造》《中央公論》におされ廃刊。同名の雑誌に,平凡社が1963年6月に創刊した日本最初のグラフィックな総合雑誌がある。
→関連項目大橋佐平大町桂月国府犀東

太陽【たいよう】

太陽系の中心をなす恒星。極大光度−26.8等,地球からの平均距離1億4960万km,視半径15′59″.64。赤道半径69.6万km(地球の109倍),体積は地球の130.4万倍,質量は1.99×1033g(地球の33万倍),比重1.41,表面重力は地球の28倍。表面温度約6000K,全表面からの放射エネルギーは3.85×1026W。黄道面への垂線に対し7°15′傾斜した方向を軸とし,赤道で25日,緯度45°で27.6日の周期で自転。 地球から見える部分は光球だが,その上に彩層とコロナがあり,太陽黒点・白斑・羊斑・粒状斑・紅炎・フレア等の現象が見られ,可視光線のほかに紫外線X線・太陽電波・太陽風等も放出される。内部で4個の水素核から1個のヘリウム核に変わる原子核融合反応が起こってエネルギーが放出され,中心部の温度は約1500万K,圧力数千億気圧,物質密度は水の約100倍と推定される。内部の化学組成は,水素約80%,ヘリウム約20%,それ以外の約70種の元素で1%以下とされる。 恒星としての太陽は,絶対光度約5等,スペクトル型G2の平均的な主系列星で,約50億年前に生まれ,今後50億年は核融合反応で輝き続けると考えられる。 太陽はギリシア神話ではヘリオス,アポロンと同一視された。錬金術では男性原理を表し,硫黄,不揮発性物質,熱,乾を象徴,またしばしば金と等置された。占星術では活力の象徴。
→関連項目月(天体)

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

普及版 字通 「太陽」の読み・字形・画数・意味

【太陽】たいよう(やう)

日。魏・曹植〔洛神の賦〕くして之れをめば、皎として太陽の霞に升(のぼ)るが(ごと)く、りて之れを察(み)れば、(しやく)として(ふきよ)(蓮)の波(りよくは)を出づるがし。

字通「太」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

知恵蔵 「太陽」の解説

太陽

太陽系の中心にある、地球に最も近い恒星。直径は地球(1万2756km、5.974×10の24乗kg)の約105倍、質量は約33万倍。主系列星で、表面(光球面)の温度は5800K(ケルビン)、実視等級は-26.7等、絶対等級は4.7等。年齢は約50億年で、今後約50億年輝き続ける。自転周期は25日。11年の周期で表面の活動が変化する。地球表面が受ける放射エネルギーは、1平方センチ当たり毎分約1.9calで、地球の生命活動や気象現象の源になる。太陽表面には様々な活動(太陽表面活動)が見られるが、黒点の活動に付随するものが目立つ。黒点は、周辺より温度が低い(4500K)ので黒く見える斑点。強い磁場を伴い、磁場が対流によるエネルギー供給を抑え、温度を低下させている。黒点の数は太陽活動と共に11年周期で増減し、活動期に多い。黒点が発達すると、黒点周辺で短時間に大きなエネルギーが爆発的に解放される(フレア)。フレアが起こると、プラズマや高エネルギー粒子が放出され、それらが地球に到達すると磁気嵐やオーロラ嵐を発生させる。太陽大気の最上層部は高温の希薄なプラズマ(約100万K)でコロナと呼ばれ、皆既日食の時に太陽をとりまく光芒として見える。太陽コロナが太陽の重力を振り切って流れ出し太陽風(ふう)となる。太陽風は数日で地球に達して地球磁気圏やバンアレン帯の形成、オーロラ現象などに関与する。彗星の尾(イオンテイル)は、彗星から放出されたイオンガスが太陽風に吹き流されたもの。

(土佐誠 東北大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「太陽」の解説

太陽
たいよう

明治~昭和期の総合雑誌。1895年(明治28)創刊,1928年(昭和3)終刊。発行所は博文館。博文館主大橋佐平が外遊し,欧米に肩を並べる大雑誌の発行を企図,長男の新太郎や坪谷善四郎が中心となって発刊された。明治・大正期を代表する総合雑誌で,内容は多岐多様,豊富な情報量をほこり,執筆陣には当時のトップレベルの学者・文学者・ジャーナリスト・政界人が顔をそろえた。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

占い用語集 「太陽」の解説

太陽

獅子座の支配星。占星術における太陽の役割は、基本的な自我を表す。ホロスコープの中心であり、西洋占星術上、最も重要視する天体。太陽が入っているサインはその個人の全体的な性格を表し、形成されるアスペクトも重要視される。一般的に世間でいわれる西洋占星術の星座はこの太陽だけの特徴を読んだものである。神話では太陽はあまり重要視されていない。

出典 占い学校 アカデメイア・カレッジ占い用語集について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「太陽」の解説

太陽
たいよう

明治〜昭和期の総合雑誌
1895(明治28)年,博文館がそれまで出していた雑誌五つを統合し,新たな国民的雑誌として発刊。高山樗牛 (ちよぎゆう) が編集主幹であった明治30年代が全盛期で,樗牛の日本主義や田山花袋 (かたい) らの自然主義を展開した。大正期に入ると『中央公論』や『改造』におされ,1928(昭和3)年廃刊。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

デジタル大辞泉プラス 「太陽」の解説

太陽〔戯曲〕

前川知大による戯曲。2011年、自身の演出により、劇団イキウメが青山円形劇場にて初演。第56回岸田国士戯曲賞候補作。第19回読売演劇大賞にて大賞・最優秀演出家賞受賞。2016年には入江悠監督により映画化された。

太陽〔スモモ〕

スモモの品種のひとつ。来歴不明の晩生の大玉種で、山梨県甲州市塩山で発見され、1969年に命名された。果皮は黒っぽい赤紫に色づき、果汁が多く、食味良好。主な産地は同県のほか、山形県、長野県など。

太陽〔曲名〕

日本のポピュラー音楽。歌は男性歌手、ファンキー加藤。2014年発売。作詞・作曲:ファンキー加藤、川村結花。日本テレビ系で放送のドラマ「ST 赤と白の捜査ファイル」の主題歌。

太陽〔マスコット〕

日本フットサルリーグに参加するフットサルクラブ、名古屋オーシャンズのチームマスコット。

太陽〔落語〕

古典落語の演目のひとつ。上方では「お日いさんの宿」と題する。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「太陽」の解説

たいよう【太陽】

兵庫の日本酒。全量兵庫県産山田錦を使用し、無添加、無ろ過で醸造する純米原酒。仕込み水は六甲山系の伏流水。蔵元の「太陽酒造」は江戸末期創業。生産石数100石あまりの小さな蔵。所在地は明石市大久保町江井島。

出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「太陽」の解説

太陽 (タイヨウ)

学名:Echinocereus pectinatus var.rigidissimus
植物。サボテン科の園芸植物

太陽 (タイヨウ)

植物。ボタン科のボタンの園芸品種

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の太陽の言及

【インティ】より

…ケチュア語で太陽の意味。インカ族(インカ文明)の宗教では,万物は創造神ビラコチャによってつくられ,太陽もまたこの神が創造したと説明される。…

【ウマ(馬)】より

… ところでこの馬に引かれた戦車に関連して,おそらくインド・ヨーロッパ語系の民族の移動とともに広まった神話が,広く旧大陸には分布している。すぐ思い出されるのはギリシア神話で,天馬があけぼのの女神エオスの車を引き,ファエトンが太陽神ヘリオスの二輪車を御し,天神ゼウスによってうたれる物語であろう。《リグ・ベーダ》でも,英雄神であるインドラは,2頭の名馬の引く戦車に乗って空を駆け,火の神,かつ太陽神であるアグニも輝く車に乗っている。…

【黄】より

…とくにインドではヒンドゥー教と仏教とにおいて尊像の身色が複雑をきわめ,黄色と決められているものだけでも枚挙にいとまがない。身色がどのようにして決定されるかは必ずしも明瞭でないが,太陽との関係がとくに重要な意味をもっている。 一般に太陽は色の輝きをもつものとされ太陽に関係のある神々(エジプトのホルス,インドのビシュヌ,ギリシアのアポロン,ペルシアのミトラ,さらにキリスト)の像は多くは金色の身色をもち,金色の衣をまとい,光輪をつけ光を放つ。…

【羲和】より

…中国古代神話の中の太陽神。《山海経(せんがいきよう)》大荒南経によれば,東南海のかなたに羲和の国があって,そこでは羲和という女性が生まれたばかりの太陽に産湯(うぶゆ)を使わせている。…

【車】より

…【古島 敏雄】
【シンボリズム】
 車,車輪ないし輪をかたどった図形は,十字マンジなどと並ぶ最も古い普遍的な象徴表現の一つと考えられ,旧石器時代の洞穴に,おそらく呪力的・宗教的な意味をもつものとして描かれているのが発見されている。これらは天体の運行を示す太陽とかかわる図形で,生命,宇宙,完全,中心,循環,永遠,光明などを表したものと思われる。太陽は,ラテン語では〈鳥輪rota altivolans〉と呼ばれ,北欧神話の〈エッダ〉では〈美輪fagravel〉,ケルト人の間では〈光輪roth fail〉と呼ばれ,いずれも円形または車輪の形で表されていたし,円盤はギリシアの太陽神ヘリオスや,インドの太陽神ビシュヌの持物であった。…

【光球】より

…太陽や恒星の表面近くの層をいい,光球層ともいう。もう少し厳密な定義は,太陽や恒星の大部分の光を発している層ということができる。…

【日食】より

…太陽が月によって隠される現象。このときは,太陽,月,地球が一直線上に並び,太陽による月の影が地上にできる。…

【火】より

…インドシナ,インドネシアの農耕民が実用化していた。(4)光学法 凸レンズ,凹面鏡によって集光した太陽光線の熱で火を得るもの。古代ギリシア,ローマ,古代中国ですでにこの方法が知られていた。…

【浮田和民】より

…その後1941年まで同校で教鞭をとるかたわら言論界で活躍。ことに明治・大正期の代表的な総合雑誌《太陽》の主幹(1907‐17)として,〈内に立憲主義,外に帝国主義(経済的帝国主義)〉の統一的な促進を力説したばかりか,吉野作造や大山郁夫らの民本主義者にも強い影響を与え,民本主義の理論的先駆者となった。《倫理的帝国主義》をはじめ多数の著書がある。…

【大橋佐平】より

…93年欧米視察に出発,ロイター通信社を訪問,通信の取次を約束して帰国,94年に内外通信社を設立した。95年に13種あった雑誌を廃刊,新たに《太陽》《少年世界》《文芸俱楽部》を創刊,糾合合併して発展にそなえた。97年に洋紙店博進堂,博進社印刷所(後の博文館印刷所),次いで1901年に創業15周年を記念して〈大橋図書館〉を設立したが,開館を目前にして死去した。…

【博文館】より

…ついで各種の雑誌を創刊し,雑誌出版を事業の柱の一つとした。なかでも高山樗牛を主幹とする総合雑誌《太陽》(1895創刊),巌谷小波編集の《少年世界》(1898創刊),硯友社と結んだ《文芸俱楽部》(1895創刊),田山花袋編集の《文章世界》(1906創刊)などが著名である。一方,全書・双書類を中心とする書籍出版にも進出,《実地応用・技芸百科全書》全61巻(1889‐93)をはじめとして,《日本文学全書》全24冊(1890‐91),《帝国文庫》正続100巻(1893‐1902)などを連続的に出版したが,とくに博文館の声価を高めたのは《帝国百科全書》全200巻(1898‐1909)で,10年の歳月をかけた大出版であった。…

※「太陽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android