サン・ゴタルド峠(読み)さんごたるどとうげ(その他表記)St. Gotthard Pass 英語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サン・ゴタルド峠」の意味・わかりやすい解説

サン・ゴタルド峠
さんごたるどとうげ
St. Gotthard Pass 英語
Passo del San Gottardo イタリア語

ヨーロッパ・アルプス中部の峠。スイスのアルプス越えのもっとも重要な峠で、ただ1回の昇降で峠の北のアンデルマットと南のアイロロを結ぶ。峠道は冬期の11~5月は閉鎖される。フランス語名でサン・ゴタールSaint Gothard、ドイツ語名でザンクト・ゴットハルトSankt Gotthardとよばれることもあるが、峠の最高点2108メートル地点は、スイス領内でもイタリア語圏のティチーノ州に属しているので、イタリア語名のサン・ゴタルドを採用するのがよい。峠はスイスの地政学的生命線上に位置し、北スイスと南スイスを、またドイツとイタリアを結ぶ役目を果たす。

 ゲッシェネンとアンデルマット間の峡谷通過の技術的克服は13世紀初めで、アルプスの谷間への植民活動と関連して峠が開削されたと考えられている。この峠を通過した重要な商品流通に関する最古の記録は1237年である。1653年以降、ルツェルン―ミラノ間に定期的飛脚便が開設され、1842年に、毎日、急行郵便乗合馬車の運行が始まり、国鉄開通まで40年間、峠は交通上重要な役割を果たした。サン・ゴタルド鉄道は峠の下をトンネル(1882年開通)で通じており、南北交通の幹線となっている。冬期には鉄道がトンネルを通過して乗客とともに自動車を運んでいたが、1980年には、全年通行可能の自動車専用トンネル道路も開通し、ますます交通は便利となった。また輸送力増強のため、2016年にはサン・ゴタルド峠を貫通する世界最長の鉄道トンネル(ゴタルド・ベーストンネル)が開通した。

[前島郁雄・森田安一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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