日本大百科全書(ニッポニカ) 「シオヤムシヒキ」の意味・わかりやすい解説
シオヤムシヒキ
しおやむしひき / 塩屋虫引虻
[学] Promachus yesonicus
昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目アブ群ムシヒキアブ科に属する昆虫。シオヤアブとよばれてきたが、分類学上や生態の特徴などからシオヤムシヒキと改称された。体長23~28ミリメートル、翅長15~20ミリメートル。体の地色は黒色。頭部前額は褐色粉を装い、顔面は著しく膨出していて、黄色粉で覆われ、黄白色の長毛が密に生える。胸部背面は褐色粉を装い、暗色の太い2縦条がある。胸部の側縁は黒色または黄赤色の長毛が混じる。はねは細長くて透明。脚(あし)は太くてじょうぶ。腹部は細長い円錐(えんすい)状で、各節背面後縁は狭く灰黄色で、黄色毛で覆われる。雄の尾端には顕著な白色毛塊があり、雌の尾端の2節は光沢のある青色である。日本全土にみられる普通種で、うなりをあげて飛び、チョウ、ハエ、コガネムシなどをとらえ、太い口吻(こうふん)を突き刺して体液を吸う。ヒトを襲うことはない。幼虫は土中にすむ細長い円筒状のウジで、コガネムシの幼虫などを捕食する。幼虫、成虫とも農業上の益虫とみなされる。
[伊藤修四郎]