日本大百科全書(ニッポニカ) 「シマック」の意味・わかりやすい解説
シマック
しまっく
Clifford D. Simak
(1904―1988)
アメリカのSF作家。新聞社勤めのかたわら1931年以来SFを書き続け、そのキャリアはすでに半世紀にも及ぶが、一流作家の仲間入りをしたのは52年の『都市』からである。これは1944年から書き継いできた八つの連作短編をまとめたもので、人類が姿を消したあと地球を引き継いだ犬たちの平和な世界が描かれ、人間はもはや神話伝説上の存在になっているという設定の未来叙事詩。もう一つの代表作『中継ステーション』(1963)は作者の生まれ故郷を舞台に、そこに暮らす平凡な農夫を通して、銀河文明と地球上の戦争の危機のかかわりを描いている(ヒューゴー賞受賞)。このように彼のSFには牧歌的な田園志向、自然や動物に対する愛情が基調にあり、SFに付き物の暴力沙汰(ざた)や戦闘場面はほとんどみられないのが特徴といえる。ほかに長編『再生の時』『小鬼の居留地』、短編集『シマックの世界』など多数ある。
[厚木 淳]