改訂新版 世界大百科事典 「シャクナンガンピ」の意味・わかりやすい解説
シャクナンガンピ
Daphnimorpha kudoi (Makino) Nakai
屋久島の高地にのみ自生するジンチョウゲ科の低木で,淡紅紫色の花を開く。高さ1.5m程度で分枝は少なく,葉の落ちた跡が目だつ。葉はひし形で長さ5cm前後,枝端に集まって互生する。初夏に本年枝の端から長さ数cmの柄を出し,その先が3,4本に分かれておのおの数個ないし二十数個の花をつける。萼は淡紅紫色筒状で上端が4裂して開き,花弁はなく,子房の基部を上縁が腺状の花盤が取り囲む。秋に乾いた小型の果実を結ぶ。屋久島の花ノ江河(はなのえご)(標高1500m)以上の山地に点生するのみで,土地の人はシャクナンと呼ぶ。この属には世界でもう1種ツチビノキD.capitellata(Hara)Nakaiがあり,宮崎県大崩(おおくえ)山落水の滝側(標高880m)にのみ生育する。高さ1m前後,葉は倒卵形で長さ18cmになる。両種とも,近縁のガンピ(雁皮)類同様樹皮の靱皮繊維が強靱であるが,産量はきわめて少ない。
執筆者:濱谷 稔夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報