ガンピ(読み)がんぴ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガンピ」の意味・わかりやすい解説

ガンピ(雁皮)
がんぴ / 雁皮
[学] Diplomorpha sikokiana Honda

ジンチョウゲ科(APG分類:ジンチョウゲ科)の落葉低木。高さ約2メートル。葉は互生し、先のとがった卵形で長さ2~4センチメートル、両面に白毛が密生する。初夏、新枝の先に数個ないし10個の黄色の小花をつける。花冠状のものは萼(がく)で、先が4裂し直径約6ミリメートル、基部は筒状で長さ約1センチメートル。暖地山中に生え、静岡県以西の本州、四国、九州北部に分布する。樹皮から靭皮(じんぴ)繊維をとり、製紙原料とする。繊維は長さ約3ミリメートル。水にさらして漉(す)いたものが雁皮紙で、淡黄色で卵の殻色のようなところから鳥の子紙ともよばれる。栽培が困難で、製紙には野生のものを利用してきたが、現在、紙の生産はごくわずかである。近縁種で、雁皮紙の原料となるものに、近畿地方以西に分布し、葉が無毛で対生するキガンピD. trichotoma Nakai、伊豆、箱根付近に分布するサクラガンピD. pauciflora Nakai et Sav.などがある。

[星川清親 2020年10月16日]


ガンピ(岩菲)
がんぴ / 岩菲
[学] Silene banksia (Meerb.) Mabb.
Lychnis coronata Thunb.

ナデシコ科(APG分類:ナデシコ科)の耐寒性多年草。ガンピセンノウともいう。中国原産で江戸時代に渡来し、庭に植え、鉢植えや切り花にされる。高さ40~80センチメートル。全株無毛で株立ちとなる。茎の下部数節は包葉となる。節はすこし隆起する。葉は交互に対生して無柄で、卵状楕円(だえん)形で先はとがり、もろい。5~6月ごろ茎頂と上部葉腋(ようえき)に径約5センチメートルの5弁花をつける。花柄は短く、花の下には対生した披針(ひしん)形の包葉が数枚ある。萼(がく)は厚い長棍棒(こんぼう)状で先が5裂する。花弁の基部は細く、平開するくさび状の花弁との境に小さい2鱗片(りんぺん)がある。弁の上縁は鋭く不規則に浅裂する。花色は普通は黄赤色で白色や絞りもある。腐植質の多い排水のよい乾きすぎない所に植えるとよい。株分け挿木、実生(みしょう)で殖やす。

[吉江清朗 2021年1月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガンピ」の意味・わかりやすい解説

ガンピ(雁皮)
ガンピ
Wikstroemia sikokiana

ジンチョウゲ科の落葉低木。西日本の暖地の山地に生じる。高さ 1.5mで幹は直立分枝する。葉は互生し,葉柄は短く,卵形で全縁,表裏ともに絹毛におおわれる。初夏の頃,その年に出た枝の先端に,黄色の小花を 10個ほど球状に集めてつける。萼は下部が筒形で上部は4裂し,おしべ8本,めしべ1本があって,果実宿存萼を伴う痩果となる。樹皮の繊維を上質の和紙,雁皮紙の原料とした。このため乱伐され,現在は野生のものは少い。

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