日本大百科全書(ニッポニカ) 「シンクロ電機」の意味・わかりやすい解説
シンクロ電機
しんくろでんき
synchros
機械的に結合が困難な二つの軸を電気的に結ぶための複数の回転式変圧器。指示シンクロと動力シンクロがある。指示シンクロは、送信機と受信機とからなり、両者は同じ構造である。固定子側には三相巻線があり、送信機と受信機の三相巻線を電気的に結ぶ。回転子側には単相巻線があり、共通の単相電源に結んである。たとえば送信機は2階に、受信機は地階にあるような場合、送信側の回転子をθだけ回転させると、受信側の回転子もただちにθだけ回転するような動きをする。したがって、送信側から受信側へ命令を伝達するような使い方ができる。なお送・受信という呼び方はかりにつけたもので、先に受信側で回転子をある角度だけ回転させれば、送信側の回転子もただちにその角度だけ回転する。
動力シンクロは、離れた所にある2台の電動機の速度を完全に合致するようにしたものである。なお、「セルシン」selsynはシンクロ電機の商品名である。
エレクトロニクスの普及により、1980年代以降はシンクロは使われなくなり、ロータリーエンコーダーなどの回転センサーにより軸の回転を検出し、信号伝送により他方を制御する方式が用いられるようになった。これを同期制御という。
[磯部直吉・森本雅之]