改訂新版 世界大百科事典 「ジェット推進船」の意味・わかりやすい解説
ジェット推進船 (ジェットすいしんせん)
jet engine ship
推進にジェット(噴流)を用いる船。通常は水のジェットが使われるのでウォータージェット推進船ともいう。この方式は古くから知られていて,17世紀半ばにイギリス特許がとられており,18世紀にはJ.アレン,J.ラムゼーなどイギリスを中心に試験された記録が残っている。ジェット推進の原理は,吸込口から水を取り入れポンプで加圧してノズルから噴出し,その反動で進むものである。ジェットの速度が減じないように通常は空中に吹き出す。飛行機では高速化するにつれプロペラ推進からジェット推進に変わったが,船ではプロペラ推進が主流であり,ジェット推進は水中翼船などの高速艇や,水深の浅い河川などの船に限られている。これは,一般に推進の効率は,船自体の前進速度と推進器が発生するジェットの速度が近いほど高いが,ジェット推進方式は比較的少量の水を高速で噴出する場合に向いているためである。40ノット程度以下の一般の船ではふつうのスクリュープロペラ推進のほうが有利とされ,またジェット推進自体も,構造上,ポンプやノズルなどを備えているために異物の吸込みや整備性,価格面などについてスクリュープロペラに比べ不利な点が多い。
執筆者:赤木 新介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報