噴射推進船(読み)ふんしゃすいしんせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「噴射推進船」の意味・わかりやすい解説

噴射推進船
ふんしゃすいしんせん

船外から吸い込んだ水を船尾方向に噴出してその反力で進む船。船首や舷側(げんそく)の吸水口から多量の水をポンプで吸い込み、船尾の水面またはやや上方の吐き出し口から噴射する。噴射ノズルの方向を変えられるようにしておけば舵(かじ)が不要で、水深の浅い河川などでも航行できる。ウォータージェット推進船、ジェット推進船などとよばれる。

 着想はかなり古く、17世紀にイギリスで特許がとられている。19世紀には実用化の兆しがみえたが、第二次世界大戦まではあまり進歩がなかった。原因は、スクリュープロペラと同じ力を得るには大量に高速の水を噴射する必要があり、それに適するポンプがなかったこと、吸入から噴出までの水路の抵抗、噴出時の減圧による水流中の気泡の発生(キャビテーション)などが解決されなかったためなどである。

 ポンプ技術の進歩に伴い、日本では1964年(昭和39)石川島播磨(はりま)重工業(現IHI)が新型の噴射推進装置、IHIハイドロジェットを開発し、67年に東海大学の調査船「北斗」(19総トン、17ノット)に搭載された。日本で大型艇に噴射推進が採用された始めである。1970年には熊野川上流の滝までさかのぼる観光船(15総トン、19.1ノット)に同種の推進装置が搭載された。1976年、佐渡汽船がアメリカのボーイング社から購入した「おけさ」はアメリカ海軍開発の噴射推進式水中翼船で、296総トン、旅客定員294名、航海速力43ノットで、ジェットフォイルjetfoilとよばれ、新潟―両津間に就航した。東京都が隅田(すみだ)川、小名木(おなぎ)川など江東(こうとう)区の川で運航した2隻の水上バス(19総トン、10ノット)は、噴射推進を採用することで、屋根から船底までの高さ2.04メートル、喫水0.70メートルと、橋が多く浅い川の航行に適した船型であった。

 アメリカ海軍は前記のジェットフォイルのほか、エアクッション船のSES(surface effect ship)、半没水双胴船などの高速船の開発に力を注ぎ、排水力約100トン、3500馬力ガスタービン4基による噴射推進の実験艇SES‐100Aは80ノット以上の速力を記録している。また、水上バイクも噴射推進である。

[森田知治]

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